原子力文化2016年6月号 対談(抜粋)

「江戸っ子」と「まいど」のコラボを
― 災害に対応できるような機器の開発も ―

無人深海探査機「江戸っ子1号」を成功させた杉野行雄さんは、今、水深1000メートル程度まで使える 小型探査機の制作に挑んでいます。 人工衛星「まいど1号」を打ち上げた青木豊彦さんは、ものづくり医療コンソーシアムを立ち上げ、 医療機器などの改善や開発に、取り組んでいます。 今月号は、東西の中小企業が、その技術力を結集した新たな挑戦を語り合いました。

(株)杉野ゴム化学工業所 代表取締役
杉野 行雄  氏 (すぎの・ゆきお)

1949年 東京都生まれ。72年日本大学生産工学部を卒業後、父親の興した杉野ゴム化学工業所に入社。2007 年ゴム成型の熟練職人として、「東京マイスター」の称号を贈られる。葛飾ゴム工業会のメンバーと共同開発した防災グッズ『地震耐蔵』は台東区、荒川区、墨田区、葛飾区の頭文字から付けられたTASKものづくり大賞で「共同開発部門・奨励賞」を受賞。葛飾ゴム工業会会長も務めている。

(株)アオキ 取締役会長
青木 豊彦  氏 (あおき・とよひこ)

1945年 大阪府生まれ。(株)アオキは97年航空機メーカーのボーイング社の認定工場に。また東大阪の技術力を生かし、人工衛星「まいど1号」を開発、2009年に打ち上げ成功。その後無人垂直飛行機「AKITU」も開発に成功した。14年4月、国立和歌山大学客員教授、大阪市立大学客員教授に就任。現在は(一財)ものづくり医療コンソーシアムの理事としても活躍中。

青木
「葛飾町工場5社 水中探査機作り」の新聞記事を読ませてもらって、的を絞ったと言ったらおかしいですが、そういうことを上手にやってはるなと。

杉野
東京の葛飾区には、助成制度があります。こんど考えている小型探査機は、開発予算1000万の4分の3が助成です。我々が出すのは4分の1ですから、250万を負担すれば、750万は助成です。

青木
それはええなぁ。東大阪市はそんなのあらへんわ。
今、医工連携で新しい産業をつくろうと思ってやってます。よその国がようつくらんようなことをやって、国内にマーケットがあるものを考えたのです。
我々は、これから長生きせんとあかんのやから、医療の改善は要ると思うからね。

杉野
思いますよ。
私は昭和24年生まれの団塊の世代でたくさんいます。「我々が年を取ったときどうするんだい」と。

青木
以前お会いしたときも言うとったんやけど、ものづくりに限らず、何かのリーダーするのは、あちこちから何やかんや言われますからね。

杉野
やるもんじゃないですね。
でも、アクが強いと言われても何にしても、誰かが引っ張んないと頓挫しちゃうんですよ。「何を言われたって、おれはやるんだ」と……。

青木
結局「言う人間は言わせておけ」というふうに思わんといけませんね。
うちは10年くらい前かな、心臓にステントを入れるのを、大阪大学と組んで研究をやっとったんですよ。
でも、開発費が足らんかったから、途中で尻切れトンボになったんです。
これから「ものづくり」というのが大事だというのは、国も識者もみんな言うてくれてんやけど、実際、我々のような中小企業に、若い意欲ある人が入ってきてくれませんやんか。
そんなとき、杉野さんが無人深海探査機「江戸っ子1号」を成功させ、そのノウハウで、今度は小型探査機の開発をやると、新聞にも注目されるし、波及効果がものすごく多いと思いますなあ。

(一部 抜粋)




2016年6月号 目次

風のように鳥のように(第78回)
注意の上にも/岸本葉子(エッセイスト)

対談
「江戸っ子」と「まいど」のコラボを/杉野行雄((株)杉野ゴム化学工業所 代表取締役)× 青木豊彦((株)アオキ 取締役会長)

追跡原子力
震災を経験して五年

緊急インタビュー
川内原発は大丈夫だったのか!?/山口彰(東京大学大学院教授)

中東万華鏡(第3回)
土耳古めしの話/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 研究理事・中東研究センター 副センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第42回)
大阪をようしようという大義があります/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

客観的に冷静に(第44回)
寺田寅彦随想 その15/有馬朗人(武蔵学園長)

笑いは万薬の長(第23回)
避難弱者と医療通訳/宇野賀津子(公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センターインターフェロン・生体防御研究室長)

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