原子力文化2020年4月号 インタビュー(抜粋)

「ちきゅう」は何を見つけたのか?
― 地震の予測に向けてデータを積み重ねている ―

「南海トラフ」という言葉を、よく見聞きします。南海トラフは、静岡県の駿河湾から、宮崎県の沖のあたりまで続くプレート境界(海溝)部を指し、今後、巨大地震が起きる可能性が指摘されている場所です。
度重なる地震災害の発生に対して、予知して備えることはできないのでしょうか。
4月13日〜19日までは科学技術週間です。これにちなんで、深海の研究に携わる倉本さんにお話を伺いました。

国立研究開発法人 海洋研究開発機構
研究プラットフォーム運用開発部門 部門長

倉本 真一  氏 (くらもと・しんいち)

1962年 東京都生まれ。富山大学、金沢大学で地質学を学ぶ。その後東京大学海洋研究所で日本海の地殻構造を研究し、初めて科学掘削船に乗船する。91年に理学博士号を取得。ハワイ大学、通商産業省工業技術院地質調査所(現産業技術総合研究所)を経てJAMSTEC地球深部探査センター長、2019年4月から現職。石油技術協会理事。専門は海洋地質学。


―― まず、地球深部探査船(掘削船)「ちきゅう」は何を見つけてきたのでしょうか。JAMSTEC(海洋研究開発機構)のホームページには「教科書を書き換える成果が出てきた」とありますが。

「ちきゅう」ができて、すぐ行なったものの一つに、巨大地震発生帯の掘削があります。場所は南海トラフです。そして南海トラフを掘削する最中に3・11の東日本大震災があったため、地震発生帯の研究としては、南海トラフと東北地方太平洋沖の2か所で掘削をしています。
「教科書を書き換えるような成果」というのは、私が学生の頃は、プレートが沈み込み始める先端部は地震を起こさない場所と教えられてきました。しかし、実はそこが重要であることがわかってきたのです。
プレートが沈み込んでいくと、最初に陸側へ堆積物がどんどん張り付いていきますが、海底の表面近くに堆積した軟らかく細かい粘土のような堆積物が張り付いていく最初の部分で、地震を起こすようなひずみのエネルギーを溜められるような硬い岩石にはなっていない。したがって、その部分は地震を起こさないと考えられ、非地震帯(A‐seismic zone)と呼ばれていました。
ところが、実際にそういう場所を掘ってみると、非常に速いスピードで動いたと思われる断層の試料が取り出されました。断層が動いたときに発生する摩擦熱がどのくらいの温度まで高くなったのか推定すると、400℃を優に超えるくらいの高温になっていました。
今まで地震を起こす場所ではないと思われていましたが、過去に、かなり速いスピードで、その部分が動いたことがあるらしいのです。
そういうことがちょうどわかった頃に3・11の地震が起きたのです。東北地方を中心に大津波が襲いました。私たちは地震発生4日後から調査を始めているのですが、プレートの先端部が非常に大きな地殻変動を起こしていることがわかり、一年後にそこを「ちきゅう」で掘ってみました。そこには断層があって、地震が起こったばかりでしたので、温度計を入れて9か月間計測しました。


 

(一部 抜粋)





2020年4月号 目次

風のように鳥のように(第124回)
手洗いの励行/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
「ちきゅう」は何を見つけたのか?/倉本真一((国研)海洋研究開発機構 研究プラットフォーム運用開発部門 部門長)

まいどわかりづらいお噺ですが
将来はコロナウイルス治療にも期待が/山下孝((公社) 日本アイソトープ協会 専務理事)

中東万華鏡(第49回)
ドラキュラ伝説/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 中東研究センター長・研究理事)

おもろいでっせ!モノづくり(第88回)
和歌山県民の手柄にせんといけません/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第22回)
ライプツィヒ徒然/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第13回)
分子科学(DNA)が人類史を変えた!/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点 コラム