原子力文化2020年12月号 インタビュー(抜粋)

感染爆発を予言した?作家
― ウイズコロナの社会は、エネルギーは ―

白いナイロン製の防護ガウンにマスク、ゴーグルを着け、長靴を履いた100人以上の男たちが動き回っていた……。
小説『首都感染』のプロローグにはこのような描写があります。『首都感染』は2010年に発売された本ですが、パンデミック、つまり感染爆発の予言の書として、新型コロナウイルスの流行とともに話題になっています。著者である作家の高嶋さんに、お話を伺いました。    

作家
高嶋 哲夫  氏 (たかしま・てつお)

1949年 岡山県玉野市生まれ。慶應義塾大学工学部卒業、大学院修士課程修了。日本原子力研究所研究員を経て、カリフォルニア大学に留学。1979年 日本原子力学会技術賞受賞。日本推理作家協会、日本文芸家協会、日本文芸家クラブ会員。1990年『帰国』第24回北日本文学賞受賞、1994年『メルトダウン』第1回小説現代推理新人賞受賞、1999年『イントゥルーダー』第16回サントリーミステリー大賞受賞(大賞・読者賞をダブル受賞)、2006年 井植文化賞受賞、2007年『ミッドナイトイーグル』映画化(松竹映画、ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンによる共同製作)、2010年『風をつかまえて』第56回青少年読書感想文全国コンクール課題図書(高等学校の部)に選定、2011年 神戸市文化賞(芸術・文学)受賞、 2017年『福島第二原発の奇跡』でエネルギーフォーラム賞優秀賞を受賞。2018年『都庁爆破!』テレビドラマ化(全国TBS系列)


今回のコロナ騒ぎでは、東京一極集中の弊害が顕著に出たと思います。僕は3月まではごく普通の生活を送っていました。2月後半、安倍さんの小中高の休校の要請がありました。その頃、僕の故郷の岡山を含め複数の県で感染者ゼロでした。東京の状況で日本中のことを判断する。これはおかしなことです。


―― 地方自治体に任せればいいのではないか、ということですか。

本来はそうあるべきでしょうが、現在の地方自治体に、その能力がない。コロナ前までは、交付金をもらって政府の指示に従っておけばいい、というのが地方の考え方だったと思います。今回は、それで経済がガタガタになってしまいました。東京と大阪が政府に反旗を翻し、言いたいことを少しだけ言いました。でも、大筋は政府の方針が日本中を動かしました。感染者がほとんどいない県も、学校を休校にし、自粛要請に従いました。これは日本の形に原因があると思います。
日本という国の形、47都道府県は、明治時代に作られたままです。少しの統合はあっても、江戸時代の藩を県にしたものです。この形で戦後も、続いています。でも、100年以上前の日本と現在の日本とでは、人間の生き方、社会などあらゆることが大きく違っている。
とくに、科学技術の発達はまったく違う社会を生み出しています。僕は昨日の朝、神戸空港から7時10分の飛行機に乗って羽田まで1時間で来ました。昔は何週間もかかった距離です。今度の新型コロナで、取材も電話やスカイプなどが多いですね。離れていても顔を見ながら話ができます。講演もZoomで何度もやりました。
先日、僕とニューヨークの友人でトーク・セミナーをやりましたが、海外を合わせて130名くらいの参加者がありました。そういうことが、自由にできるようになりました。

―― それはコロナがきっかけ、と考えてよろしいですね。

そうです。いずれそうなったでしょうが、何年もかかる社会の技術革新が一気に進んだ感じです。アメリカでは、在宅勤務、オンライン授業が普通になっています。
今回、ITに関しては日本が完全に後進国だったことが露呈されました。僕の孫はインターナショナルスクールに通っていますが、学校が休校になった翌日からオンラインの授業を始めたそうです。宿題も出て忙しくなったと言ってました。
僕は昔、学習塾を営んでいたので、塾団体の仕事もしています。教育は大事なことなのでボランティアでやっているのですが、多くの塾は一週間くらいでオンラインに切り換えました。ところが公立学校の場合はずいぶん時間がかかったようです。結局、出来ていない学校も多いらしいです。


 

(一部 抜粋)





2020年12月号 目次

風のように鳥のように(第132回)
オンライン会議/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
感染爆発を予言した?作家/高嶋哲夫(作家)

追跡原子力
・東日本大震災後で初めての再稼働
・福島第一原子力発電所の処理水の処分は

中東万華鏡(第57回)
昭和天皇と中東―イエメン篇/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第96回)
三密でも大丈夫になるかもしれませんねえ/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第30回)
昔の面影を残す近代建築/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第21回)
聖徳太子も地磁気変動を目撃?/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

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