原子力文化2021年12月号 インタビュー(抜粋)

リアリティのあるエネルギー政策とは
― カーボンニュートラルや安全保障から原子力を ―

「本当に申し訳ありません。深い失望も理解しています」。
国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の最後の全体会議で、アロク・シャーマ議長はこのように謝罪しました。
COP26では、石炭火力発電の段階的廃止が争点の一つとなりましたが、最終的に、中国とインドの反対意見を受け入れる形で、「段階的に削減」という表現に弱められました。
カーボンニュートラルに向けて、各国の主張が衝突しましたが、日本はどのようなエネルギー政策を採ればよいのでしょうか。エネルギー・環境政策を専門とする遠藤典子さんに伺います。

慶応義塾大学特任教授
遠藤 典子  氏 (えんどう・のりこ)

京都大学大学院エネルギー科学研究科博士課程修了。博士(エネルギー科学)。専門はエネルギー政策、セキュリティ・リスクガバナンス。2015年より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授、2020年より同大学グローバルリサーチインスティテュート特任教授。17年の安倍フェローシッププログラムのフェローに就任して以降、日米での経済安全保障に関する調査・研究活動に従事している。


―― 原油価格が上昇して、私たちの生活にも影響が出ています。

原油価格の上昇に加えて、円安が進んでいます。ガソリンなど、すぐに石油の価格が反映するものに加えて、いわゆる加工食品などの価格も上がってきています。
もちろんこれから電気料金も上昇していきますので、そういう意味では非常に危機的な状況、家庭へも法人へも影響を与えるような状況になっています。


―― 経済活動の再開が、上昇圧力になっているのでしょうか。

そうですね。それも大きな影響の一つだと思います。
また、脱炭素の流れが世界中で広がる中で、再生可能エネルギーを使った発電を行なう場合の調整力として火力発電が必要になる、というところもあります。
特に顕著に状況が表れているのが欧州の天然ガス火力です。需要が高まって供給不足、需要過多という状況になっていて、それに連れて日本向けの価格も全体として上昇している状況にあります。
ですから脱化石、脱炭素という動きではありますが、結果的には化石燃料を使わざるを得なくなって、需給が逼迫する悪循環になっています。


―― 中国は脱炭素を掲げながらも、石炭の増産を決定しました。

中国は脱炭素を加速する一方で、経済成長とともにエネルギー需要が増えています。オーストラリアからの輸入が安全保障上の理由から難しくなると、自国の生産を増強しました。また、日韓だけでなく、中国もLNG(液化天然ガス)を調達するようになりました。中国の需要が非常に旺盛であるということが、世界マーケットに影響を及ぼしていると思います。
今までは日本がLNGの調達ナンバーワンの国だったわけですが、中国に追い抜かれるという報道があって、これは非常にインパクトの大きい事態です。

 

(一部 抜粋)





2021年12月号 目次

風のように鳥のように(第144回)
バーチャルでヨガ/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
リアリティのあるエネルギー政策とは/遠藤典子(慶応義塾大学特任教授)

世界を見渡せば(第12回)
今よりマシな資本主義/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡放射線
ミイラをCTスキャンで見てみたら

中東万華鏡(第69回)
中東から石油を輸入して一世紀/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第108回)
日本が憧れられる国に、と原さんは言います/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第42回)
バスが燃える話/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第33回)
古墳壁画の発見・保存修理で英知結集/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

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