原子力文化2022年12月号 インタビュー(抜粋)

自分の人生は自分しか決められない
― 自分がキラキラできる道はかならずある ―

現在、二人に一人が、がんになる時代です。でも必ずしも、早期発見、早期治療が最善ではないとおっしゃる木村盛世さんは、ご著書『キラキラした八〇歳になりたい』で「日本の健康診断は世界のスタンダートではない」と書いていらっしゃいます。 提唱なさる「キラキラした生き方」について、随筆家で医師の木村さんに伺いました。

医師・(一社)パブリックヘルス協議会理事長
木村 盛世  氏 (きむら・もりよ)

東京都生まれ。医師、作家。筑波大学医学群卒業。米国ジョンズホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了。ジョンズホプキンス大学デルタオメガスカラーシップを受賞。米国CDC(疾病予防管理センター)プロジェクトコーディネーター、財団法人結核予防会、厚生労働省医系技官を経て、現在はパブリックヘルス協議会理事長。主な著書に『厚労省と新型インフルエンザ 』(講談社現代新書)『厚生労働省崩壊 「天然痘テロ」に日本が襲われる日』(講談社)『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)、共著に『ゼロコロナという病』(産経セレクト)などがある。


―― 健康診断は他の国にはないのですか。

他国でも、ある年齢になったら、地方自治体あるいはエリアで子宮頸がんの検診のクーポンを送付するなど、そういうことが行なわれていないわけではありません。 日本は法律で、健康診断の受診が企業の職務規定に入っている、あるいは国家公務員であると、そうした健康診断を受けないと懲戒の対象になる可能性もある。ここまで徹底してやっている国は非常に珍しい。先進国の中ではない。
同じようなシステムでやっているのは、唯一韓国くらいです。やはりそういうところは日本とよく似ています。
健康診断には二つあって、健診とがんのスクリーニング(検診)です。特にがんのスクリーニングは、必ずしも早期発見・早期治療が生存確率を上げるかどうかという根拠は未だないというのが現状です。それをのべつ幕なしに全て早期発見・早期治療というのは、どうかと考えています。
二〇代から乳がん検診をして、小さいしこりが見つかったら大部分の乳房を取ってしまうフルコースの治療が決まっている国は珍しいと思います。
今年八月に亡くなられた『患者よ、がんと闘うな』などの著作で知られる近藤誠先生がよく言っていたのですが、ウサギのがんとカメのがんがあって、一つのがんが一センチになるには一〇年くらいかかり、特に高齢者だとゆっくり進行します。ゆっくり進行するがんを治療して果たして何になるのかということもあるし、非常に進行の早いがんは見つけたところでもうすでに全身に転移していて厳しい状況に置かれてしまう。
がんというのは、一つは老化のプロセスだし、もう一つはがんが見つかったときはそれがその人の運命だろうと……。海外でも早期発見・早期治療は進んでいますが、逆に早く見つけてどうするのかという考えや意見もあります。
例えば、線虫検査ですが、少しでもがん細胞があると騒いで切除する。通常のがん細胞は上皮内がんで、早期であれば消えてしまうケースもあるのに、それを見つけて全て取っていたら、毎日ひたすらがんを見つけて戦うことになります。精神的にも日々どこかにがんがあるのではないかと思いながら生きていかなければならないので、これはハッピーな生き方ではないと思います。


―― 健康診断は受けられていますか。

基本的には受けないです。特にがん検診はまず受けないです。
実は、足の手術をしようと思って、結局やめたのですが、そのときに術前検査をして、何十年ぶりかでMRIを受けて特に症状はありませんでした。MRIですべての身体の臓器を診察できるかといったら、そうでもないので、そこそこでいいんじゃないかと。体調が悪くなって病院に行って、それで見つかったものは見つかったもの、くらいで考えたほうがいいのではないかなと思っています。
確かに健康志向が高く、自分の身体に気を遣うのは、個人差があってしかるべきだと思うし、特に高齢者になればなるほど、その個体差は大きくなるから、いろいろな考え方があっていいと思います。ただ、治療を受けたくない人、自分がこういう治療法をしたいと思っている人がそれを選べないのはおかしいと思います。


(一部 抜粋)





2022年12月号 目次

風のように鳥のように(第156回)
ラップの端を見つけたい/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
自分の人生は自分しか決められない/木村盛世〈医師・(一社)パブリックヘルス協議会理事長〉

世界を見渡せば(第24回)
イーロン・マスクは救い主か独裁者か?/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡原子力
エネルギー安全保障が優先課題に

中東万華鏡(第81回)
時を測る(3)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第120回)
がん撲滅サミットが大阪で開かれました/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第54回)
自由化してはいけないもの/川口マーン惠美(作家)

ベクレルの抽斗(第3回)
襷をつないでくれる人がいればこそ/岸田一隆(青山学院大学経済学部教授)

交差点