vol.4(2020/3/13)

石油・ガスが豊富にあっても、原子力開発を進める国・アラブ首長国連邦
… 国の将来のために原子力発電所を建設



中東のアラブ首長国連邦(UAE)が、原子力発電所の運転を始めます。発電所の名前は、“バラカ(Barakah)”。首都アブダビの西270km・ペルシャ湾に面する沿岸に立地しています。
2020年2月17日、UAEの連邦原子力規制局(FANR)が1号機の60年間の運転を許可しました。バラカ発電所は、2012年7月に建設が始まりました。一基140万kWの発電炉を4基建設しています。発電所の合計出力は560万kWになります。4基とも韓国製です。60年間の運転保守も韓国が請け持ちます。UAEは、中東地域ではイランに次いで原子力発電を持つ二番目の国になります。(発電所所有会社:The Emirates Nuclear Energy Corporation・ENECの子会社:Nawah Energy Company)
UAEは、エネルギー資源大国なのに、何故、原子力発電開発を進めるのでしょうか。


<若い国:連邦国家UAE>

UAEは、人口一千万人弱。七つの首長国が連合して1971年に建国された連邦国家です。建国49年目の若い国です。ちなみに、国民の平均年齢(正確には中位)は38.4歳。日本の平均年齢が48.6歳ですから、10歳も若いのです。もっとも、日本はモナコを除けば、世界一の高齢者国なのですが。
経済的には、国民一人当たり国民総生産額(GDP)が68,600ドル(2017年)で、日本の1.6倍という豊かさです。この豊かさは、石油と天然ガスの輸出によるものです。(出典:USCIA World Fact Book 2019)
UAEでよく知られている場所は、二か所あります。昔は真珠で有名で、現在、金融都市として知られるドバイ。北に位置しています。もう一箇所は、南に位置する首都アブダビでしょう。UAEは、ホルムズ海峡の南・西岸に位置し、北側は、ペルシャ湾です。海峡の対岸は、イランです。南はオマーンで、そのオマーン湾の東対岸は、パキスタンです。


<石油・天然ガスを輸出しているUAE>

この国は、石油や天然ガスの埋蔵が豊富で、ガスや油を輸出するエネルギー資源大国です。日本も長年、石油・ガスを輸入してきました。日本は、石油の全てを輸入に依存していますが、近年、その二割強は、UAEに頼っています。さらに、2011 年には、再生可能エネルギーの国際機関(IRENA)本部が首都アブダビに置かれてもいます。


<産油国が何故原子力を?…エネルギー省次官の説明>

このような国・UAEが原子力発電所の運転を始めようとしているのです。エネルギー資源国が何故、原子力開発を進めるのでしょうか。その理由について、昨年2019年2月に来日したUAE・エネルギー省のマタール次官は、次のように説明しています。

・2050年国家エネルギー計画を作っている。
その計画では、
(1)発電設備の50%をクリーンエネルギーにする。
(2)一次エネルギーの15%をクリーンエネルギーにする。
原子力発電10%、再生可能エネルギー5%。

(3)エネルギーは多様化する…天然ガス、石炭、原子力発電、バイオマス、風力発電。
(4)今後、あらゆるエネルギー分野で“省エネルギー”を進め、2050年までに、最終エネルギー需要をこれまでの傾向が続くとした場合の想定需要(BAU)に対し40%減らす

としているのです。


<原子力発電をクリーンエネルギーの主力として、エネルギー多様化の要とする>

次官が説明したとおり、UAEにとって、原子力発電は、クリーンエネルギーとして国の将来を考えたエネルギー多様化の要なのです。
なお、マタール次官が、太陽光発電について、次の通りの興味ある発言をされていたのが記憶に残っています。
「UAEは、2050年までに現在300万kWある太陽光発電を4,400万kWにまで増やす計画だが、“太陽光発電は、広大な土地を必要とするので、小国には向かない”。」