vol.9(2020/8/5)

注目:英国の原子力発電開発 〜エネルギー自給率が高くても原子力発電をやる〜



<二つの島国>
英国と日本、二つの国は、共に島国です。両国を比較すれば、英国は、国土面積は日本のおよそ三分の二、人口はおよそ半分です。正式な国名は、“United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland(グレート・ブリテンおよび北部アイルランド連合王国)です。東にあるグレート・ブリテン島と西のアイルランド島の二つの島から成り立っています。イングランド人、スコットランド人、ウエールズ人そしてアイルランド人の四民族で英国を形作っています。


<エネルギーの歴史を創ってきた英国>
英国は、歴史を創ってきた国です。エネルギーに関しても同様で、実に多くの貢献をしています。 何と言っても、最大の貢献は、蒸気機関を発明し、産業革命を起こしたことでしょう。この蒸気機関は石炭の大量利用の時代をもたらしました。石炭から石油への転換も英国が始めたといえます。20世紀の初め、第一次世界大戦直前のことです。海軍大臣になったウインストン・チャーチルが軍艦の燃料を石炭から石油に転換しました。サウジアラビアで巨大油田が開発され、世界的な“流体革命”が始まる40年も前のことです。

<欧米先進国最初の発電用原子炉を造った英国>
さらに、第二次世界大戦後、冷戦時代でしたが、自由主義国圏の西側で最初に原子力発電を始めたのも英国でした。開発したのは、天然ウラン燃料黒鉛減速ガス冷却の原子炉です。この英国開発の改良型原子炉(AGR)を日本は、発電用原子炉第一号として東海村に導入しました。1960(昭和35)年代中頃のことです。

<エネルギー自給率68%の英国>
英国のエネルギー事情をちょっと概観します。 ノルウェーとの間の北海で、石油と天然ガスが生産されています。生産のピークは、20年ほど前でしたが、今でも、国内で消費しているガスの半分は、北海産です。ガス火力発電で電気の41%をまかなっています。大西洋と二つの島の周辺では、15世紀に始まる航海時代に帆船を動かした“貿易風”が今でも吹いています。ですから、風力発電の開発が陸上でも洋上でも進んでいて、既に、電気の20%は、風力によっています。結果的に、原子力発電を加えた英国のエネルギー自給率は、68%です。日本の自給率は、低くて、10%に達しません。

<英国の背景>
こうしたエネルギー選択をしてきた英国のこれからのエネルギー動向には、大いに関心があります。伝えられてくる色々な情報を総括すると、英国は、改めて原子力発電開発を進めるに違いありません。そう考える事由:背景を二つ挙げてみます。
背景の一つ目は、前に触れていますが、現在動いている原子力発電所:AGRが全て、既に運転を始めてから30年以上経ち、高齢化していることです。そう遠からず、更新が必要です。
背景の第二は、地球温暖化対策です。
英国は、2050年までにCO2排出ネット・ゼロと言う目標を掲げました。それも、世界で初めて法律で決めました。地球温暖化対策の退路を断ったのです。英国は、この目標達成のために、出来ることはすべて取り組むに違いありません。再生可能エネルギーをフルに活用するでしょう。水素の利用にも取り組むでしょう。ガス火力などについても、排煙からCO2を回収して地下に圧入・貯留するCCSを実現することになるでしょう。それでも、各種の選択肢の中で、原子力発電は、最も有効で有力な現実的選択肢であるに違いありません。

以上、英国について勉強してみました。英国は、上述の背景に応えながら、エネルギーの自給率について、今の水準を維持するか一層高くするかしようとしているのです。日本と比較して、同じ島国でも、エネルギーについての取り組みに大きな違いがあるのに驚かされます。