vol.16(2021/9/10)

COP26を控えて その1


アメリカ・ケリー気候変動問題大統領特使の中国訪問

“CO2排出量最大の国:中国は国民一人当たりのCO2排出量ではアメリカの半分”。
皆さん、どう思いますか?


(出典:日本原子力文化財団 エネ百科)

アメリカのケリー気候変動問題大統領特使が9月1日、中国を訪問されました。その前日には、日本で、関係閣僚と会談をしています。11月に英国グラスゴーで開かれる予定のCOP26を前にした環境外交の一環でしょう。

<温暖化ガス排出二大大国中米…考えさせられる特使の訪中>
中国とアメリカ:この二つの国は、地球温暖化ガス(GHG : Green House Gas)排出という点では、世界第一と第二の大排出国です。
それだけに、アメリカの大統領特使が中国を訪問されたというニュースを知って、考えさせられることがあります。
この二つの国は、大きさで似通っていますが、大きな違いもあります。

<エネルギー消費量、CO2排出量ともに、二国合計で40%超>
二つの国のエネルギー消費量とエネルギー起源CO2の排出量の世界全体での構成比(%)を見たものが次の表です。中国は、エネルギー消費量・CO2排出量共に、世界のおよそ三割をしめています。中米二国合計だと、いずれも、四割強です。(英国BPのエネルギー統計、2020年実績推計)
中国 アメリカ (参考)日本 世界
一次エネルギー消費量 26.1% 15.8% 3.1% 556.63 Exajoules
エネルギー起源CO2排出量 30.7% 13.8% 3.2% 322.84 億トンCO2

こうした大きさの背景は、人口と経済規模があります。勿論、選択されている石炭などのエネルギー源が深くかかわっていることは言うまでもありません。今回の“窓”では、エネルギー源には、ほとんど触れていません。それは、相対的にまだまだ豊かではない国にとって、エネルギー源選択の大きな基準が“安いか”、“高いか”という経済性だからです。

<人口:世界一位と三位>
言うまでもなく中国は、世界最大の人口国で14億44百万人の巨大人口国です。アメリカの人口は3億33百万人で、中国、インドに次いで世界三番目の大きさです。ちなみに、日本は1億26 百万人です。念のためですが、インドの人口は、13.93億人と推計されています。

(出典:国連人口基金「世界人口白書」(UNFPA、2021年))



<二国合計の経済規模は、世界の三分の一>
アメリカの中央情報局:CIAが毎年出している世界各国の概要を紹介するWorld Factbookというデーター集があります(Web版もあります)。
ここに、各国の実質国内総生産額:GDP( ppp=購買力平価調整)が示されています。最新のデーターによれば、2019年の実績推定額は、中国:22.53兆ドル、アメリカ:20.52兆ドルです。二国合わせると全世界の34%を占める大きさです。
ところが、この二つの超大国を国民一人あたりでみると、豊かなアメリカとまだまだ成長途上にある中国との大きな違いが見えてきます。 

<CO2排出量を人口一人当たりで見ると中国はアメリカの半分>
国民一人当たりのCO2排出量をEUのデーターベース(EDGAR : Emissions Database for Global Atmospheric Research、2018年値)から、数値を引用します。 国民一人当たりの排出量を主要五か国について見てみます。 アメリカ:16.1トン、ロシア:12.1トン、日本:9.4トン、中国:8.0トン、インド:1.9トン、です。COP26が開かれる英国と原子力発電が多いフランスも、参考に見ますと、英国:5.6トン、フランス:5.0トンです。 数値が示すとおり、中国は、世界最大の排出国ですが、人口一人当たりエネルギー起源CO2排出量でみると、アメリカの半分なのです。これは、勿論、エネルギー消費量や使っているエネルギー源の違いが大きな背景ですが、国民の豊かさの違いも大きいのです。

(出典:EDGAR : Emissions Database for Global Atmospheric Research、2018年値)


<背景の一つ:中国は、アメリカに比べて“豊かさ”四分の一>
このような現実を国民一般の立場からみると、温暖化ガス排出の背景に国民生活の豊かさの違いがあることが見えてきます。その実情を前出のWorld Factbookでもう一度見てみます。 国民一人あたりの実質GDP(年間)をマクロで見る“豊かさ”指標とすれば、2019年推計値で、アメリカ:62,530ドル、中国:16,117ドルとなっていて、アメリカの豊かさが際立ちます。ちなみに、日本は、41,429ドルです。
ケリー特使は、日本とは気候変動への取り組みに関する共同の声明を出しました。しかし、中国とでは、同じことはできなかったようです。中国がケリー特使に、どのような話をしたかは伝えられていません。

理事長 桝本 晃章