vol.17(2021/10/19)

COP26を控えて その2


ヨーロッパで動き出す原子力発電開発



1.英仏首脳、原子力発電開発に積極発言

大統領選挙を半年後に控えたフランスのマクロン大統領が10月12日、300億ユーロ規模の“フランス2030年投資構想”を公表しました。大統領は、その中で、“2030年までに10億ユーロを投資し、SMR:小型モジュール炉など原子力分野の革新を進める”と明らかにしました。それも、“迅速に進める”、“原子力発電技術の必要性は変わらず維持をする”、さらには、“原子力こそ、フランスの歴史的事業(モデル)だ”と強調しました。
また、10月1日、英国のジョンソン首相も、原子力発電開発の必要性を強調しています(BBC/Walesインタビュー)。 次がジョンソン首相の言葉です。
“率直に言えば、これまでの首相たちは、厳しい判断を避けてきた”、“新しい原子力発電所は必要だ。原子力発電所は、ベースロード用の電源の一つである”、“(立地)候補地は幾つかあるが、ウイルファ(Wylfa)もその内の一つだ”。“ウイルファ”というのは、日本の日立(ホライズン)が、原子力発電所建設計画を進めていた地点で、英国政府との資金に関する話し合いがうまくゆかず、昨年、撤退したところです。
なお、英国フィナンシャル・タイムス紙(10月16日)によれば、政府は、近く“ネットゼロ戦略”を公表するようで、その中に、原子力発電推進がうたわれるということです。

英仏両国首脳の発言は、まるで、タイミングを合わせたかのように見えます。
その背景を考えてみます。

<発言の背景二つ>

(1)原子力発電が現実的地球温暖化対策だとの再確認

背景の第一として考えられるのは、次のような両首脳の認識ではないかと思われます。
“原子力発電が発電段階でCO2排出をしない地球温暖化対策に沿った、現実的で、有効なエネルギー源だと考えている”。“現実的”という意味は、発電が安定していて、経済的だという意味です。


(原子力発電や水力発電を多く利用する国ほど発電時に発生するCO?は少ない。特に、原子力発電の割合が約7割と高いフランスではその傾向が顕著。)

<世界最初に地球温暖化ガス(GHG)排出削減目標を法律にした国:英国>
実は、英国は、世界で初めて地球温暖化ガス排出削減目標を法律で定めた国です(2008年、気候変動法:Climate Change Act)。この4月には、温暖化ガス排出削減目標を一段と引き上げました。欧州連合:EUも、7月に、あたかも英国と競うかのように、加盟国間で徹夜の議論をし、削減目標値を引き上げました。時あたかも、英国グラスゴーでのCOP26が開催される直前です。
背景としては、もう一点、次の事情が影響しているだろうと思われます。

(2)期待通りに発電しなかった風力発電

ヨーロッパ各国が発電源として依存・期待している風力発電に特別な出来事がありました。ヨーロッパ大陸の西側に吹く貿易風が、今年の2、3月、さらに、9月にも、異例な弱化をしたのです。期待していた風力発電が期待通り発電しませんでした。


<英国は、廃止予定の石炭火力を動かす>
英国では、供給力不足から、廃止予定だった石炭火力発電所をにわかに稼働して、電力需要をまかないました。
気象の専門家が色々と分析していますが、過去10年間で最も弱い風だったとも言う人もいます。ちなみに、ウインド・ファーム運営会社の経営者も収入が予期通りでない状況にぶつかって、収入源を多様化しないといけないとまで言っています。
ちなみに、英国とEUの総発電量における風力発電の比率を調べますと、英国:24.2%、EU:14.2%という状況です。なお、風力発電が大きいドイツでは、22.9%です。(2020年、BP)
大西洋に吹く風は、かねて“貿易風”といわれる北東の風です。 このような出来事を知って、思い出すことがあります。

<大航海時代を拓いた貿易風、今では発電用の羽を回す>
中世に世界一周を果たした二人の人がいます。一人は、ポルトガルのバスコダ・ガマ(1497年リスボン出発)です。もう一人は、海賊から海軍提督にまでなった英国のフランシス・ドレイク(1577年英国プリマス港を出発、世界一周)です。二人は、この貿易風を大きな帆に受けて出航したのです。中世に世界を拓いた風が21世紀の今、風力発電の羽を動かして電気を発電しているのです。

2.東欧の国ポーランド・温暖化対策として原子力発電開発を進める

地動説のコペルニクス(15世紀後半〜16世紀前半)、ピアノの詩人・ショパン(19世紀前半)、二度のノーベル賞に輝いたキューリー夫人(19世紀後半〜20世紀前半)。この三人の偉人を生んだ東欧の国ポーランドが原子力発電開発を始めます。


ポーランドは、ドイツに並ぶ産炭国です。電気の四分の三を石炭火力発電に頼っています。その国が、EU加盟国として、石炭火力発電を原子力発電に代替しようという開発プロジェクトに乗り出しました。どこの国の技術を採用するのか、資金調達はどうするのかなど、これからの進展に期待するわけですが、ここでも、原子力発電が現実的なエネルギー選択肢になっています。
このポーランドの計画では、GE日立との交渉が進んでいるとか、アメリカ・ベクテル社が乗り出しているとかいう情報があります。この“窓”を書いている最中にも、フランスのEDFが数基のEPR(European Pressurised Reactor or Evolutionary Power Reactor)建設の提案をしているという情報に接しました。
東欧の国・ポーランドのこれからの動きに、大いに関心をもって注目していきます。

理事長 桝本 晃章