vol.18(2021/12/23)

2022年を考える


2022年は、どんな一年になるでしょうか。個人的期待を込めて、エネルギーを中心に、展望してみます。

<貧しさが深まり、経済格差が拡大しています>

2020年年初からの新型コロナウイルス感染拡大は、医療関係者の皆さんの不休のご努力とワクチン接種などによって、次第に、収束に向かっているようです。しかし、変異株とも言うべき“オミクロン株”の拡大がもう少し続きそうです。気になるところです。

世界中で広がったこのウイルスによるパンデミックは、アフリカ地域をはじめとして、世界各地で、貧困層を増大させています。日本でも、生活保護申請をされている方々が増え、アルバイトの機会が減って収入が激減している方たちが増えています。貧困層の人たちが増えて、経済格差が拡大しているのです。

<電気の大切さが一層大きくなっています>

ところで、この新型コロナウイルス感染者の医療に勤める医療関係者を支えているものの一つに、“電気”があります。医療施設の部屋などの換気や、ワクチン保存などには、“電気”が欠かせません。電力供給に努めている皆さんは、まさに、社会のエッセンシャル・ワーカーとして、医療・消防・交通・通信などにかかわっておられる皆さん同様、その仕事の重さが増しているのです。黙々と仕事に努める多くの皆さんに、心から敬意を表します。

<再生可能エネルギー発電の特徴が鮮明になってきています>

2022年は、電気をはじめとして、エネルギー需要が回復すると見られます。社会経済的に成熟している日欧各国の電力需要は、パンデミック以前のトレンドに戻ると思われます。発電源については、再生可能エネルギー発電がこれまで同様増えると思われますが、発電量全体の中での比率が大きくなってきていますので、自然エネルギーの特徴の“間欠性”が、時に、顕在化して、安定供給を脅かすかもしれません。昨年既に、ヨーロッパで、大西洋側の風が弱くなり、風力発電が期待通りの発電ができないという事態にぶつかっています。英国などでは慌てて石炭火力で発電をするという状況でした。



また、既にアメリカのカリフォルニアやドイツでみられますが、間欠的な電気を、一般社会が必要とする安定した電気にアップグレードするために、必要なコストがかさんで、最終消費段階での電気料金が高くなっています。

<原子力発電開発が“地球温暖化対策”として進みます>

2022年・最大の特徴は、原子力発電開発が、二酸化炭素フリーの電源として改めて評価され、進展がみられる年になると思われます。すでに、カナダのオンタリオ州や北欧の国ポーランドがSMR(Small Module Reactor)という小型原子力発電炉に、強い関心を表明していて、プロジェクトの進展がありそうです。SMRは、世界各国で多くの新規研究開発が進んでいます。中でも、既にメデイアで伝えられているとおり、GE Hitachiが、先行しているようです。



<ドイツ・エルマウでのG7サミットが気になります>

実は、2022年6月末に、ドイツの南部、オーストリアとの国境の近くにあるエルマウ城で、G7サミットが開かれます。エルマウでのサミットは、2015年に続いて二度目です。

ご存じのとおり、現在のドイツ政権は、三党の連立政権で、“緑の党”から、党首を含めて二名の緑の党の首脳が閣僚に名を連ねています。すでに、この緑の党の影響は、ドイツのエネルギー政策に色濃く出ていて、再生可能エネルギーのさらなる増強が表明されています。おそらく、閣僚会議などの場を含めて、このドイツの閣僚の方々は、G7の他の国々の閣僚に対して、緑の党の考えを強く主張し、勧めるに違いないと思われます。なお、ドイツは、家庭用電気料金が、G7各国の中で一番高いのですが、それにもかかわらず、国民の皆さんは、現在の政権を支持しています。皆さん、このドイツのエネルギー政策をどう考えますか。

理事長 桝本 晃章