vol.19(2022/2/4)

“脱炭素”と“電化”に応える原子力発電


21世紀の今、エネルギーのトレンドは、“脱炭素”と“電化”です。
昨年11月に英国グラスゴーで開かれた国連のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)前後から、世界各国で原子力発電の開発に対する関心が高まっていて、具体的に建設に向かう動きも出てきています。このように原子力発電の開発が進められる最大の要因は、地球温暖化ガス(GHG)の排出が少ないからです。改めて確認してみましょう。

原子力発電は、火力発電と違って、発電段階では地球温暖化ガス(GHG)の二酸化炭素(CO2)を出しません。そして、経済的で安定した電気を生み出します。勿論、安全は第一です。11年前の福島第一原子力発電所の事故後、日本の安全規制は、世界で一番厳しいといわれるまでになっています。



原子力発電の特徴は、2021年6月18日の“窓”で、ご紹介した“ビル・ゲイツ”氏の言うとおりです。お読みになっておられない方は、ぜひ、目を通していただきたくお願いします。
⇒まっさんの窓 Vol.15「ビル・ゲイツ氏の語る原子力発電」

<発電などからのCO2は、GHGの65%>

GHGの内エネルギー消費によって出されている二酸化炭素:CO2は、次の気象庁の図にある通り、およそ65%です。

人為起源の温室効果ガスの総排出量に占めるガスの種類別の割合


出典:気象庁資料「地球温暖化に関する知識(2021年10月)」



<発電設備の“ゆりかごから墓場まで”の全工程でCO2排出を評価する>

ところで、現在、発電方式には、水力発電(水の流れや水流の高低差を利用する)、火力発電(石炭や天然ガスなどの化石燃料をエネルギー源とする)、太陽光(光を電気に変換する)や風力(風の力で風車などを回転させて発電する)、あるいは、バイオマス(木材を燃料とする)発電などの再生可能エネルギー発電、そして、原子力発電(原子燃料・ウランの核分裂エネルギーを利用)など、幾つかの方式があります。

火力発電は燃料が燃える際にCO2を排出することは皆さんご存じのとおりです。一方、水力発電、太陽光発電、そして、原子力発電は、“物を燃やしません”から、CO2は出しません。バイオマスは、植林などによって排出するCO2をキャンセルできます。

発電は、色々なエネルギーを電気に転換するシステムですから、発電段階でCO2を出さなくても、発電所の建設中だとか燃料の生産や輸送の段階など、システムのどこかでCO2が排出されているかもしれません。地球を取り囲む大気には物理的な国境はなく全部つながっていますので、全体で評価することが大切になります。

実は、1970年代に、「原子力発電はその建設と燃料の精製に沢山のエネルギーを使うので、発電所を作り続けると原子力発電所の発生するエネルギーより、発電所をつくったり運転したりするエネルギーのほうが上回ってしまう」という主張(P.F.チャップマン)が出てきて、関係者を驚かせたことがあります。これに、電力中央研究所が茅陽一先生と一緒に、まさに、“原子力発電所のゆりかごから墓場まで(ライフサイクル)のエネルギーの収入と支出のバランス”の計算をされました。そんな過去の出来事も踏まえて、今回は、前回にも見ていただきましたが、次の「各種電源別のライフサイクルCO2排出量」のグラフをご紹介します。

このグラフは、当財団の、“エネ百科”の原子力・エネルギー図面集に掲載されているもので、出典は、電力中央研究所の報告書です。




理事長 桝本 晃章