vol.24(2022/10/3)

バルト海・海底天然ガス・パイプラインの爆発
…パイプラインが示すエネルギー共同体としてのヨーロッパ


<天然ガス・パイプラインで四件の破壊>

9月26、27日、ヨーロッパ北部・デンマークの東南・バルト海の海底を通る二本の海底ガス・パイプラインが三か所で爆発しました。爆発によってパイプラインからガスが漏れて、海面上に泡が大きく広がっている写真をメデイアが伝えています。
さらに29日には、海底パイプラインからの四件目のガス漏れをスウェーデンの沿岸警備隊が発見したと伝えられました。これらのパイプラインは、いずれもロシアから天然ガスをヨーロッパへ送るものです。


<パイプライン破壊が改めて示すエネルギー共同体ヨーロッパ>

こうした一連のパイプラインの爆発によって、ヨーロッパ諸国はパイプラインのセキュリテイ確保に一段と力を入れています。電力ネットワークもそうですが、大陸中に張り巡らされた天然ガス・パイプラインは、ヨーロッパ諸国がエネルギー共同体であることをよく示しています。


出典:原子力・エネルギー図面集



最近では、ヨーロッパの南に位置する地中海の東側・エジプトやイスラエルで天然ガスの開発・生産が始められていて、パイプラインで北方の国々へ天然ガス輸送が始められてもいます。
こうした現実は、ヨーロッパの関係諸国がエネルギーの需給を通じて共同体であることをよく示しています。


<事件を伝える英国BBC>

ところで、今回の海底ガス・パイプラインからのガス漏れについて、英国のBBCは、次ように伝えています。
“EUは、ロシアがガスの供給を西側諸国に対する武器として使っていると、繰り返し非難している。EUがウクライナを支援していることに対し、ロシアが報復しているとの主張だ。”
このEUの主張がそのとおりだとしますと、今回のガス・パイプラインの破裂は、“破壊”に違いなく、それは、ヨーロッパ諸国の連帯をも“破壊”しようとするものだといっても過言ではありません。


<厚さ4cmの鋼鉄管にコンクリートを厚さ11cm・巻いたパイプライン>

壊れたパイプラインは、厚さ4cmの鋼鉄製のパイプを厚さ11cmのコンクリートでカバーしたものだそうです。ちょっとやそっとの力では壊れることのないよう頑丈に作られているようです。
それだけに、今回のパイプの破裂は、強力・強大な破壊力によるもので、相当の技術力を持つ何らかの組織によって行われたとみられています。メデイアは、“サボタージュ”によるものだと伝えています。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻とヨーロッパ諸国のロシアへの制裁が行われている最中の出来事ですから、EUの意見も含めて色々な憶測が語られるのも当然ともいえるでしょう。


<パイプラインによる天然ガスに電力供給の14,15%を頼るEU>

ちなみに、EUは、電力供給の20%を天然ガスに頼っています。そのガスの七割がパイプラインによってやり取りされています。ですから、今回の事件は、ヨーロッパ諸国にとって深刻な意味合いがあるのです。
軽々には、言えませんが、どうやらエネルギーが戦争の道具に使われていると見るのが至当のようです。
このパイプライン破壊による天然ガスの供給支障がガスの需要期の冬にまで長引きますと、人命にもかかわりかねない深刻な状況にもなりかねません。大いに関心をもって見守りたいと考えます。

理事長 桝本 晃章