活動レポート

WEB交流会 開催レポート 
  • 日時
    • 2020年9月27日(日)16:00~18:15
  • 場所
    • オンライン開催(Webex)
  • 参加者
    • 29名
  • 共催
    • 資源エネルギー庁、
      原子力発電環境整備機構(NUMO)
  • 開会挨拶
    • 青田 優子 経済産業省資源エネルギー庁 放射性廃棄物対策課 課長補佐
    • 高橋 徹治 原子力発電環境整備機構 地域交流部長
  • 情報提供
    • 演題:住んでみてわかった本当のフィンランド
    • 講師:セルボ貴子 通訳・翻訳・コーディネーター
    • 内容:
      • 現在、原子力発電が4 基稼働しており、建設中が1 基、最終処分場は2020年代に操業開始予定である。フィンランドの世論調査では原子力発電について、「増やす」が47%、「丁度いい」が24%と肯定的な考えの回答割合が高く、発電種別でも再エネ、水力、原子力の順となっている。
        「原子力発電を増やすべきか」の問いには、チェルノブイリ事故時は、肯定の回答が40%と低かったが、現在は温室効果ガス排出制限の観点から70%と回復している。フィンランド人は、感情的ではなく、現実的に見て物事を受け入れる傾向がある。原子力には50年近く恩恵を受けており、高レベル放射性廃棄物は安全に管理の上、処分しなくてはならないという考えである。
        福島事故後はフィンランド規制庁(STUK)が原子力発電所のストレステストを経て、技術的に厳しく検査をしており安全と発信している。STUK の専門家の信用と透明性が高いことが最終処分事業への信頼性につながっている。フィンランド人は事業者説明が「オープンかつ安全」が第一と根付いており、それが信頼の高さに繋がっている。
  • 質疑応答
    • どうすれば専門家の信頼が高くなるのか。
      • 信頼を得るためには、専門家も様々な証明された積み上げを説明する。歴史がないものを理解するのは難しい。福島の事故では24 時間体制で、NHK などの情報を提供しており、放射性物質がどのくらいでフィンランドに来るのかなども計算をしていた。
        情報が交錯するのは当たり前で、信頼は積み上げるのは大変だが、それを崩すのは簡単である。崩れた信頼を立て直すことは大変である。失われた信頼を立て直すことが大事。リテラシーについては、多かれ少なかれ極端な考えはある。
    • 日本では授業で原子力を取入れることは難しいが、フィンランドの学校・教育の様子はどうなのか。
      • フィンランドは9 割が公立の学校、原子力について偏った教育をしていない。ビジターセンターに社会見学で訪れ、教育が行われるほか、サイエンスキャンプ・エネルギーのWS などで触れる機会がある。中立・ニュートラルに教育に取り入れられている。
    • 市民レベルで、学習活動などは行っているのか。
      • 自治体として町と事業者の会合は年4 回行っている。その情報を住民にも伝えている。グリンピース、WWF、みどりの党など原子力については慎重派であるが、地層処分については賛成である。住民は、原子力発電所にバリケードや激しい活動をする団体を意外と冷静に見ている。これは、規制庁・事業者への信頼が高いからかもしれない。
    • 自治体の議員がみんなで考える、揚げ足取りではなく、みんなで取り組む姿勢に国民性が出ていた。交付金に目が行っているが、本質ではなく、お金に見えない町の豊かさを感じた。
      • エウラヨキ市は固定資産税で得た収入を福祉・医療・教育などのソフト面に活用している。(セルボ氏の住む)ポリ市では学校の合併が進んでいるが、立地地域(エウラヨキ)の学校は残っている。そういった面でも税収をうまく活かしている。
  • アンケートより
    • 参考になったこと
      • フィンランド人の「使用済燃料は放射線を長期間出し続けるから、身近に置けない。」という観点をもっとクローズアップして、活動しなければいけないと思った。情報公開の透明性を原子力発電会社においても“「オープンかつ安全に」が第一”をスローガンにしているところを日本に定着させることが大事と思った。
      • 処分地決定に至ったフィンランドと日本の違いが、国民の人柄なども影響していることがとても興味深かった。
      • フィンランドと日本の社会の違いを考慮した上で地層処分の方法などはどう異なるのかを教えていただき参考になった。
      • 教科書で、エネルギー需要について触れ、最終処分の必要性もセットで言及されていることに驚いた。まさに「自分で考える、論理的な思考」につながる教育と、感心した。輸入食品の安全性確保とリスクコミュニケーションにおいても、監視体制が見えにくかったり、判りにくかったりすると、消費者は不安になる。自分で考え、将来像を冷静に考えることができる教育と次世代層の育成が必要と、改めて感じた。
        フィンランド人は感情的にならずに考える人が多いこと、50年近く利用してきたウラン燃料に対する恩恵、みんなでリスクを共有する発想、STUKが技術的に厳しく調査・管理しているなら信用するなど、公的組織への信頼が高い点など、日本人と異なる特徴があることが分かった。
      • メディアリテラシー教育がフィンランドの学校で行われているとのことで、これは良い取り組みだと思った。
      • セルボさんのお話では住んでみて肌で感じてこられたフィンランドの事情がよく伝わってきて、とても有意義だった。セルボさんご自身が原子力発電や最終処分について知識が深いのでひとつひとつのお話が納得いくものだった。
      • 日本とフィンランドの違いで、電源立地交付金がない事や自然災害の少ない国である事、原子力に関する事故がなく、チェルノブイリの事故の反省を活かしていることによってオルキルオト3号機の建設中であることは嬉しく、日本も新技術で新設されることを望みます。
    • 印象に残ったこと
      • メディアリテラシーの対応。個人がたくさんの情報からチョイスできる力をつける教育が必要。フィンランドでは、税金投入が固定資産税だけで、協力金などの分配はない。ということ。
      • STUKがとても信頼されているとのこと。どうしてそれだけの信頼を得てきたかなどが、印象的だった。もっと知りたいと思った。
      • ネットリテラシー教育がしっかりなされていることが素晴らしいと思った。日本でも情報が簡単に手に入れられる環境で情報の取捨選択能力が重要であり、特にメディアでネガティブに取り扱われがちな地層処分事業では是非日本でも力を入れてほしい分野だと思った。
      • セルボ貴子さんのお話は、非常に判りやすかった。フィンランドでは電源立地交付金はなく、税収のみである点に驚いた。エウラヨキでは、固定資産税(お金)による恩恵だけでなく、文化や芸術レベル、学習意欲が上がったとのこと。地層処分事業にはこのような正の側面が生まれることを、日本でも伝えていくべきと思った。自然災害の少ないフィンランドの地理の特性を、うらやましく思った。逆に考えると、日本は越えなければならないハードルが多々あるように感じた。本日のweb交流会に、複数の学生さんが参加されていらっしゃり、頼もしさを感じた。フィンランドの地図が手元にあれば、より理解が深まったように思う。
      • 発表されたセルボ貴子さんは、お話が上手で当該分野に関しても該博であり感心した。多くの質問に対して丁寧に答えられていたセルボさんの人柄も印象に残った。フィンランドにおける地元の人々の原子力に対する意識が比較的理性的で、また中立的であると感じた。一方、わが国の原子力に係る厳しい状況にあっては、なかなかフィンランドのようにはいかず、改めて先行きが長いと思った。
      • フィンランドの原子力政策と国民性が印象的だった。政府というかSTUKへの信頼感などとても日本では、という感じだ。
      • フィンランドの原子力規制が上手く行えているのは情報の開示が日本よりも丁寧だから、という事を実例で教えてくれた事。