原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

日本のエネルギー選択の歴史と原子力

日本では、明治時代の初期にガス事業と電気事業が始まり、明治時代の半ば頃に日本初の石炭火力発電所や水力発電所が運転を開始しています。明治時代は小規模な石炭火力発電中心の時代で、大正時代以降は大規模な水力発電中心の時代が続きました。
そして、第二次世界大戦の終結後、日本は四つの大きなエネルギー選択の転換期があり、現在、五つ目の岐路に直面しています。

エネルギー選択の大きな流れ

エネルギー選択の大きな流れ

出典:資源エネルギー庁資料より作成

第一の選択

(1960年代~国内の石炭から石油へ)

1945年に戦争が終わり、復興を遂げた日本は、1955年から高度経済成長期に入り、エネルギー需要が大幅に増加しました。当時、中東やアフリカで相次いで大油田が発見され、政府はエネルギー供給の中心を国内産の石炭から海外産の石油に転換する政策を打ち出しました。この結果、日本のエネルギー自給率は、10年間で58%から15%へと大幅に低下しました。

路面電車「玉川電気鉄道」

路面電車「玉川電気鉄道」

第二の選択

(1970年代~二度にわたる石油危機)

日本は高度経済成長を遂げ、経済大国となりましたが、1970年代に二度の石油危機におそわれました。石油危機は、産油国での戦争など政情不安定を契機に起こったもので、原油価格が高騰し、世界経済は大きく混乱しました。石炭から石油へと舵を切り、エネルギーの8割近くを輸入の原油に頼っていた日本も例外ではありませんでした。第一次石油危機の後、日本経済は戦後初めてマイナス成長となり、高度経済成長は終わりました。
日本では原油価格の高騰により電気料金も高騰し、政府は省エネの必要性や石油を中東に大きく頼るという地政学的リスクを避け、原子力や天然ガスの普及拡大など、エネルギー源の多様化を進めました。

廃線間際の路面電車「玉川電気鉄道」

トイレットペーパーの買い占め騒動

第三の選択

(1990年頃~地球温暖化と電力自由化)

1985年に国連環境計画が「対策を開始すべき」と警鐘を鳴らしたことから、地球温暖化が注目されるようになり、1997年には京都議定書が採択され、地球温暖化問題は日本のエネルギー政策を考えるうえでも非常に重要な課題となりました。石油に代わる新エネルギーとして太陽光や地熱、石炭(石炭液化技術)、水素などの開発に一層の拍車がかかり、また原子力や天然ガスの利用も促進されました。
1990年代以降は、電力や都市ガスの自由化も行われました。戦後、日本の電力は、発電・送電・配電・売電を地域の電力会社が一貫して行う地域独占体制がとられ、電力の安定供給を支えてきました。一方で電気料金が世界的に見て高コストになっていることから、「安定供給の確保」、「料金の最大限抑制」、「電気利用者の選択肢を増やし、企業の事業機会を拡大する」という目的のもとで改革が進められました。

氷河や氷床の融解

氷河や氷床の融解

第四の選択

(2011年~東日本大震災と福島第一原子力発電所事故)

2011年に発生した東日本大震災・福島第一原子力発電所事故によって、「エネルギー関連設備の安全性」という大原則を再認識し、政府は震災前に描いていたエネルギー政策をゼロベースで見直すこととしました。震災後に改定された第4次エネルギー基本計画では、「原子力発電への依存度を可能な限り低減すること」や「安全を最優先したうえで再稼働すること」、「再生可能エネルギーの導入を加速化すること」などの方針が示されています。
また、地震や津波によって、被災地の石油供給拠点やガスの製造・供給設備が破損し、一部で機能停止に陥るなど、災害時におけるエネルギー供給の脆弱性も露呈しました。

廃線間際の路面電車「玉川電気鉄道」

福島第一原子力発電所

写真提供:東京電力ホールディングス(株)

第五の選択

(2030年~パリ協定の目標達成に向けて)

2015年に開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く抑え、1.5℃までに制限する努力をする」としたパリ協定が採択されました。
これを踏まえ、日本では2050年カーボンニュートラルや、2030年度の温室効果ガス排出削減目標の達成に向けて温室効果ガス排出削減と経済成長・産業競争力向上の同時実現に向けて、「GX(グリーントランスメーション)」の実現に向けた基本方針が策定されました。
これは、産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造を脱炭素中心のものへと転換する、まさに産業・エネルギー政策の大転換を意味しています。

イメージ画像

ワンポイント情報

日本での原子力利用の始まり

1953年の国連総会でアメリカのアイゼンハワー大統領が原子力の平和利用をよびかける演説『Atoms for Peace』を行い、世界各国で「原子力の平和利用」が始められました。日本でも1955年に原子力基本法が成立し、原子力利用が始まりました。原子力基本法では、原子力の研究や開発、利用は平和を目的としたものに限ること、また、「民主」「自主」「公開」の三原則にもとづくことが定められています。
当時の日本には、まだ原子力発電を建設するノウハウがなかったため、アメリカやイギリスなどに協力を仰ぎ、原子力発電の開発が進められました。また、当時の先端技術であった原子力発電を民間企業のみで開発することは難しかったことから、国も協力して「日本原子力発電(株)」が設立されました。
そして、1966年に日本で初めてとなる商業用原子力発電として、日本原子力発電(株)の東海発電所が、茨城県那珂郡東海村に建設され、運転を開始しました。核分裂によって放出される中性子の速度を黒鉛によって下げる「黒鉛減速ガス冷却炉」という方式がイギリスから導入されました。この運転開始により、日本への原子力発電に関する技術移転が始まり、徐々に国産の原子力発電が開発されていくこととなります。

東海発電所

東海発電所

写真提供:日本原子力発電(株)

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日本のエネルギー選択の歴史と原子力

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エネルギーミックスの重要性

エネルギーミックスの重要性

日本のエネルギー政策〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策
〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策〜2030年、2050年に向けた方針〜

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〜2030年、2050年に向けた方針〜

エネルギーの安定供給の確保

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エネルギーの経済効率性と価格安定

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環境への適合

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原子力の安定的な利用に向けて〜再稼働、核燃料サイクル、使用済燃料の中間貯蔵〜

原子力の安定的な利用に向けて
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原子力の安定的な利用に向けて〜高レベル放射性廃棄物〜

原子力の安定的な利用に向けて
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国際的な原子力平和利用と核の拡散防止への貢献

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〈参考〉世界の原子力発電の状況

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〈トピック〉電力需給ひっ迫

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〈トピック〉ロシアのウクライナ侵略の影響

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原子力開発の歴史

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日本の原子力施設の状況

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原子力発電のしくみ

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原子炉の種類

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次世代原子炉の種類

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原子力発電所の構成

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原子力発電の特徴

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原子力発電所の廃止措置と解体廃棄物

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核燃料サイクル

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再処理と使用済燃料の中間貯蔵

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高レベル放射性廃棄物

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低レベル放射性廃棄物

低レベル放射性廃棄物

さまざまな分野で活躍する放射線

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放射線と放射能の性質

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放射能・放射線の単位と測定

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被ばくと健康影響

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外部被ばくと内部被ばく

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身のまわりの放射線

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原子力発電所の規制と検査制度

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新規制基準を踏まえた原子力施設の安全確保

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原子力発電所の地震の揺れや津波・浸水への対策

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自然現象や重大事故への対策

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原子力施設のさらなる安全性向上に向けた対策

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自主的・継続的な安全性向上への取り組み

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原子力防災の概要

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原子力災害対策と緊急事態の区分

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初期対応段階での防護措置

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被ばくを避けるためにとる行動(防護措置)

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平常時と原子力災害時の住民の行動

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福島第一原子力発電所事故の概要と教訓

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原子力施設と法律

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原子力損害の賠償

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