月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2023年11月号 インタビュー(抜粋)

農水省のユーチューバーに聞いてみた
― 自分の言葉で国民に直接話をする ―

農林水産省の公式SNSである「ばずまふ」(BUZZMAFF)が好評です。 番組の中には再生数が一〇〇万回を超えるものもあります。 とかく堅いと思われる官公庁の情報発信の中で、なぜBUZZMAFFが注目されるのでしょうか。 ユーチューバーで担当者でもある白石さんに伺いました。

農林水産省 大臣官房広報評価課広報室
白石 優生  氏 

 

農林水産省職員で日本初の国家公務員YouTuber。鹿児島大学法文学部卒。2019年同省入省。農林水産省公式YouTubeチャンネル「BUZZMAFF」に参加、同省職員の野田広宣氏とコンビを組み、タガヤセキュウシュウを結成し、2020年1月から同チャンネルで動画配信を開始。コロナ禍で消費が落ちた花の購入を呼びかけた動画など数々の話題動画を配信。チャンネル全体の運用担当者としても活躍。2023年10月から大臣官房政策課食糧安全保障室。

―― 原子力関係もそうですが、情報を発信するに際しては「わかりやすさよりも正確さを重視する」という傾向があります。どうお考えですか。

BUZZMAFFというチャンネルができて三年半が経ちました。令和二年の一月に始まったチャンネルなので、あと二か月余りで四周年を迎えます。私は、BUZZMAFFが始まったときの初期からのメンバーとして、活動しています。
農水省の全職員に対して「ユーチューブ活動を仕事としてやりたい人がいないか」という公募がありました。私が手を挙げたきっかけは、行政、農水省の発信する情報に対する問題意識が大きかったからです。
「面白くない」「難しい」「顔を出さない」というのが行政の情報発信の三つの傾向だと聞きました。
一つ目の「面白くない」というのは、私たちは国民の皆さまが納めた税金を使って仕事をしていますので、面白くすると「何をふざけたことをしているんだ」という批判を受けることも実際にありますが、面白いものがあってもいい、と私は思っています。
二つ目の「難しい」というのは、間違いを過度に恐れるところがあるので、わかりやすさよりも正確さや正しい表現を使おうとするあまり、一般の人があまり聞かないような表現になってしまうこともあるのではないでしょうか。
三つ目の「顔を出さない」は、担当者の顔が見えない。農林水産省というだけでは、ロボットのように顔がない機械のようなイメージで、具体的なイメージがないことが問題かなと思います。
ただ、正確さを重視する情報もあるべきだとは思います。例えば、法律やルールに関するものですね。
国民の皆さまに広く発信するために、これまで農林水産業や農林水産省にも関心がなかった層に向けた情報媒体をつくろうと、BUZZMAFFは、立ち上がったと思います。

 

―― 農水省の英称の頭文字MAFFに「バズる」(流行る)という言葉を付けた名前は、高齢者にはわかりづらいです。対象は若い人と考えてよろしいですか。

全国民を対象にしているのは言うまでもないのですが、特に若い世代を対象にし始めたということはあります。

新しい情報媒体を つくろうと 始まったユーチューブ

―― 例えば、法務省と協力(コラボ)して法務省食堂のカレーを食べるなど、そういったテーマはどういうふうに選んでますか。

そもそも農水省として出したいテーマはたくさんあります。お米の担当、畜産の担当、野菜の担当、経営や金融についての担当など、みんな広報したいものはそれぞれ持っているのですが、一応、予算として割り振られているものはあっても、それ以上はありません。
SNSについている予算はほぼないと言ってもいいと思います。しかしBUZZMAFFでSNSを使って「工夫次第でこんなに武器になるんだ」ということも、職員は理解できたと思います。
始めた当初は、当時の大臣の「新しい情報媒体をつくっていこう」という思いを実現しよう、でも予算が大きくついてはいないから、自分たちの予算でできることは何かと思って、考えついたのがユーチューブチャンネルだったと思いますが、予算がほとんどない良さもあります。

―― 例えば……。

マスコミや広告代理店を通さないことで、農水省の職員の生の声が何も介さずに国民にそのまま直に伝わります。代理店、マスコミを通したら、一回フィルターを通してしまう。フィルターを通して国民の皆さまに口当たりがよいような表現、例えばCMのようなさわやかでスッと入ってくるようなものをつくるよりも、よりリアル感がでます。
話題によっては緊迫感だったり、どういう思いで仕事に取り組んでいるのかという背景がわかる。情報が何かを通していく中で変わっていくということがない、という安心感です。
国民にそのまま直に訴えかけるのですから、何にもじゃまされずに届けられる、ということが、まず一つよかったことなのかなとは思います。

 

(一部 抜粋)





2023年10月号 目次


 
インタビュー

農水省のユーチューバーに聞いてみた/白石 優生〈東京大学 名誉教授〉

世界を見渡せば(第34回)
ロンドン出張記/関美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡原子力
中間貯蔵とは

中東万華鏡(第92回)
アイスクリームのコーンと中東/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第131回)
テレビのインタビューを受けました/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第65回)
一万種のPFAS使用を全面禁止?/川口マーン惠美(作家)

ベクレルの抽斗(第15回)
ペストと万有引力/岸田一隆(青山学院大学経済学部教授)

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