月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2020年11月号 インタビュー(抜粋)

コロナや原子力のメッセージをどう伝えるか
― メッセージの送り手も変わらないと? ―

旅行代を補助するGo To トラベルキャンペーンや、プロ野球の観客人数の制限をゆるやかにするなど、世の中は新型コロナウイルス対策から経済の復興に動いているようです。 しかし、感染を心配する人もまだ多く「ただの風邪派と自粛警察に二極化しているような感じです」と科学コミュニケーションを模索する岸田一隆さん。 今月は情報の送り手、受け手について考えてみました。

青山学院大学経済学部教授
岸田 一隆  氏 (きしだ・いったか)

1961年 東京生まれ。理学博士。東京大学理学部助手、 理化学研究所仁科加速器研究センター先任研究員を経て、現職。日本サイエンスコミュニケーション協会編集委員、日本生産性本部イノベーションデザインコース・プログラムコーディネーター。主な著書に『青学発 岸田教授の「エネルギー文明論」』(エネルギーフォーラム)、『3つの循環と文明論の科学』(エネルギーフォーラム)他

―― 新型コロナウイルスに関して、テレビのワイドショーや新聞では、緊急事態宣言の解除後も、夜の街の接待を伴う場所は危険だ、リスクが高いと伝えました。しかし、若い人はけっこう行っていたようです。あれだけ出しているメッセージは若者に届かないのか、もしくは参考にするテレビやネットが違うのか。

一言でいって、人によります。実際に三密をものすごく恐れている若者もいます。若者は本当に多種多様です。
今回のコロナに関しては、それなりに情報が多いのです。ただし、不確定要素も含む情報です。それを元に、各自で判断しているところがすごく強いです。
ですから、伝わってないというよりは、三密を避ける必要がない、という結論を出している若者もけっこういる、そういうイメージだと思います。
自粛することにより失うものの方が多い、そういう判断もあり得ます。
二〇代や三〇代に感染者が多いのですが、二〇代の死亡リスクは相当小さいじゃないですか。そうなると、なぜ自分たちが自粛しなければいけないのか、となります。
もちろん、若者からリスクの高い高齢者に感染する可能性があるのですが、だとすれば「大学へ学生を来させないのではなくて、学生は大学に来てもいいから、先生がリモートで授業をすればいいじゃないか。先生だけが在宅する。そうしたらいいんじゃないか」という意見すらあります。
というわけで、メッセージが伝わってないというよりは、この場合は個人の判断だったのかなと……。
そもそも伝えるメッセージが正しいものかどうか、そこから疑われています。

 

―― どういうところですか。

コロナに関しては、専門家と呼ばれる人たちが比較的単眼的です。例えば、感染疫学の専門家なら、感染疫学のことしか考えていません。医学系やウイルス学系の人たちもそれぞれ自分たちのものの見方だけで言っていることが多く、専門家と呼ばれる人たちですら、意見が食い違う現象が起きています。そうなると、それぞれ異なることを言うから、受け取る側は自分の意見、自分の感覚を補強するメッセージを取捨選択してしまいます。
今、世の中で何が起きているかというと、二極化しているのです。「コロナはただの風邪」というのと「コロナほど怖いものはない」ということで、ただの風邪派対自粛警察のような感じになっています。すごく危ういことです。

 

 

(一部 抜粋)





2020年11月号 目次

 

風のように鳥のように(第131回)
断捨離しすぎ/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
コロナや原子力のメッセージをどう伝えるか/岸田 一隆(青山学院大学経済学部教授)

特別インタビュー
原子力発電は依然、地域の持続を図るため基盤を担う/井上 武史(東洋大学経済学部教授)

中東万華鏡(第56回)
中東放屁譚/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第95回)
三密できるような対策できませんかなあ/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第29回)
EUの環境政策は実現可能か/川口マーン惠美(作家)

温新知故(第20回)
人類存亡の謎も解く「チバニアン」科学/斉藤孝次(科学ジャーナリスト)

交差点


 

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