月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2022年9月号 インタビュー(抜粋)

心が生まれるとき
― 孫とニホンザルと素読とカナリウムと ―

誰も観察したことがない観察の記録、と副題にある『孫の力』という本を書いた動物学者の島泰三さん。 意外に感じますが、孫と祖父母の関係は、長寿になったつい最近のことだそうです。 それが、どういうふうに人格の形成に影響を及ぼすか。 ようやく行動制限がなくなり、祖父母と孫の再開の話を聞く、夏の終わりに考えました。

日本アイアイファンド代表
島 泰三  氏 (しま・たいぞう)

大学院人類学博士課程退学。京都大学理学博士。マダガスカル共和国シュヴァリエ。 2021年度JTS学術賞受賞。日本アイアイファンド代表。

―― 手元にある新書『孫の力』は二〇一〇年発行です。

二〇一三年に六版を出しました。その後『孫の力』という雑誌が出たのです。この巻頭にずうっと孫について書いていました。新書の中で書き切れなかった問題を、雑誌には幾つか書きました。雑誌はずいぶん長くつづいたので、その巻頭に書いたものをまとめて本にしたかったのですが、まだできていません。

 

―― 今、新書『孫の力』の主人公であるお孫さんのアイちゃんは何歳ですか。

二一歳になりました。大学三年生です。インターカレッジのサークルなどに入っています。 全国で一〇万人規模の小学生から中学生くらいまでの子どもが参加するピアノコンクールというのがあります。
これに小学二年生で出場しました。東京大会の小学一・二年生の部では、表彰者の発表は佳作から上位に向けてされますが、銅賞、銀賞になっても名前を呼ばれなくて、一体どうしたのだろうと思っていたら、金賞でびっくりしたことがありました。面白い子でした。
それで、中学は当然、音楽サークルなどに入るだろうと思っていたのに、「サークルは何?」と聞いたら、「陸上」。
この子自体がすごく面白い子でしたので、観察記録を書いていても楽しかったのです。新書を執筆しているころは、ほぼ毎週会っていました。

母親たちは子育てに素人だということが一番大きなポイントだ

 

―― 孫が祖父母の記憶を残せるようになったのは、長寿になって、やっと孫と祖父母の関係ができてきたからだと。


見えるようになってきたということですね。歴史的に見ると、つい最近と思います。この本を作っていくときにいろいろな伝記を探すのですが、祖父母との関係を書いているものはわりと少ないですね。J・ピアジュなど発達心理学者はたくさんいるのですが、孫を観察した人はいないです。

 

(一部 抜粋)





2022年9月号 目次

風のように鳥のように(第153回)
麺の食べ方/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
心が生まれるとき/島泰三(日本アイアイファンド代表)

世界を見渡せば(第21回)
陰謀論のつけ/関 美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

追跡原子力
「誰がなぜゲーム」で地層処分を考える

中東万華鏡(第78回)
覆面の預言者(2)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第117回)
リスクは想定内やったのでは/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第51回)
飛行場のカオスはなぜ起きたのか /川口マーン惠美(作家)

温新知故(最終回)
「人新世」に問われる原子力科学の叡智/斉藤孝次 (科学ジャーナリスト)

交差点




 

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