月刊誌 原子力文化 インタビュー

原子力文化2023年4月号 インタビュー(抜粋)

北の国で認知症をささえる
― 一番誇れるのはボランティア組織 ―

高齢化社会の到来がよく話題になりますが、加齢とともに増えると言われるのが認知症です。
予防方法はあるのでしょうか。また周りはどう支えたらいいのでしょうか。
高齢化の先進地である北海道砂川市で、地域一体となって認知症をささえる「砂川モデル」を構築した内海久美子さんにお話を伺いました。

砂川市立病院 認知症疾患医療センター長
内海 久美子  氏 (うつみ・くみこ)

 

北海道旭川市出身。1988年に札幌医科大学を卒業後、札幌医科大学医学部附属病院を経て砂川市立病院に勤務。現在は認知症疾患医療センター長として、アルツハイマー病などの認知症疾患を専門とした医療を提供。“物忘れ外来”の開設や“中空知・地域で認知症を支える会”の立ち上げをはじめ、地域一体となって認知症の患者さんを見守る地域包括ケアを実践し、“砂川モデル”として全国への普及に取り組む。

―― 高齢化社会の日本で、よく認知症が話題になりますが、そもそもどんな症状なのでしょう。

 以前は、例えば八〇歳になったら同じことを言ったり、聞いたりするのは年のせいで当たり前だと思われていました。しかし医学の進歩、特に画像診断が一九九〇年代以降非常に進歩したことによって、単純な加齢変化ではなく、脳が委縮して働きが落ち、病気が起きているということが早い段階でわかるようになりました。
 記憶力は、誰でも二〇歳を過ぎたら衰えてきます。これは加齢による変化ですが、高齢になって記憶力の障害が加齢による変化のスピードよりも大きく早まるときに、画像診断で六~七割がアルツハイマー型認知症と診断されます。MRIつまり磁気共鳴画像では、脳の中の海馬や頭頂葉が委縮している器質的変化というものがわかります。
 認知症というのは「認知機能が障害される状態」を言います。
 「では、認知機能というのは何ぞや」ということになりますが、認知機能すなわち(イコール)記憶力ではありません。
 一般の方は、よく認知機能イコール記憶力と考えていますが、記憶力は認知機能の一つでしかありません。理解力や判断力あるいは推論する力など、さまざまな高度な我々の思考力も含まれます。その他に計算力や読んだり書いたり、話したりという言葉の能力も入ります。これら全部含めて認知機能と言います。記憶力はごく一部にしかすぎないのです。
 記憶力はそんなに悪くはないけれども、例えば視空間認知能力の低下がみられる場合もあります。

 

―― 視空間認知能力というのは。

 例えば、空間の位置関係です。頭の中で地図を描いて、「こっちへ行ったら、あそこに辿り着けるだろうな」など考えますが、そういう能力が落ちて道に迷いやすくなる方もいます。もの忘れはあまり目立たないが。図形を書かせてもうまく書けない視空間認知能力が落ち、注意力が低下している認知症に、レビー小体型認知症というものもあります。
 一般的に認知症イコールもの忘れと思われているのは、アルツハイマー型認知症の特徴です。

 

九〇歳、一〇〇歳でも認知症でない方は立派な海馬をしている

―― 脳が委縮するのは、加齢の問題ではないのですか。

形態画像と言うのですが、脳のMRI画像で委縮がわかります。アルツハイマー型認知症では加齢に伴う生理的変化の度合いよりも、さらに委縮しています。記憶の中枢と呼ばれている海馬がアルツハイマー型では委縮します。
 海馬の加齢に伴う委縮の度合いは、実はそれほど大きくはありません。八〇歳、九〇歳、一〇〇歳でも認知症でない方は、立派な海馬をしています。「海馬は生理的変化の萎縮を受けづらい」というのが、これまで診断してきた印象です。
 海馬が委縮している代表的な疾患はアルツハイマー型認知症です。ですから、もの忘れから始まります。

 

―― 認知症イコールもの忘れではなく、もの忘れから、いろいろな症状に広がる。

 そうです。最初は、ちょっとしたもの忘れが出てきます。日常生活や社会生活に支障をきたして、初めて認知症なのです。
 ですから、少しもの忘れが出ていても、通常の生活に支障がない場合には、軽度認知障害(MCI)と言ってグレーゾーンの領域になります。それはアルツハイマー型やレビー小体型認知症などの前段階かもしれないし、単純に加齢だったり、うつ状態によるものかもしれません。その原因は様々です。
 今、この段階で予防できないか非常に注目が集まっています。

 

(一部 抜粋)





2023年4月号 目次

風のように鳥のように(第160回)
断水を機に/岸本葉子(エッセイスト)

インタビュー
北の国で認知症をささえる/内海久美子(砂川市立病院 認知症疾患医療センター長)

世界を見渡せば(第27回)
インド初出張記/関美和(翻訳家・杏林大学外国語学部准教授)

特別寄稿
原子力を取り巻く「空気」が変わった?/木村 浩〈木村学習コンサルタンツ 代表〉

中東万華鏡(第84回)
ユダヤの偽救世主 シャベタイ・ツヴィ(1)/保坂修司(一般財団法人日本エネルギー経済研究所 理事・中東研究センター長)

おもろいでっせ!モノづくり(第124回)
会社はたためるけど日本国はたためません/青木豊彦(株式会社アオキ取締役会長)

ドイツでは、今(第58回)
人手不足は教育界にも広がっている/川口マーン惠美(作家)

ベクレルの抽斗(第7回)
パスが欲しいなら動け/岸田一隆(青山学院大学経済学部教授)

交差点




 

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