理事長コラム「まっさんの窓」

Vol. 35 (2024/3/1)

夏の酷暑と原子力発電

<昨年の夏は酷暑だった>

昨年の夏は世界各地で記録的な暑さでした。
酷暑の原因は空気中のCO2濃度が高くなったことによる温室効果の強まりです。いわば、地球温暖化の進み過ぎです。
空気中のCO2濃度が濃くなると、地球を取り巻く空気の温度が上がります。このことは、日本の気象学者真鍋淑郎博士が分析解明されています。真鍋博士はこの研究で2021年にノーベル物理学賞を受賞されました。

<“化石燃料利用時代の終わりの始まり”>

昨年の夏の暑さを体験して、国連のグテーレス事務総長は“地球が燃えている”と言いました。また、国際エネルギー機関:IEAのファテイ・ビロル事務局長は“我々は化石燃料利用時代の終わりの始まりにいる”と言っています。終わりの始まりという言葉は、英国のウインストン・チャーチル元首相が1942年に発した言葉です。


<今年の夏も暑そう…気象専門機関の予想>

ところで、今年の夏も暑いでしょうか?
お隣の中国は相当に暑くなりそうです。ロイター通信が昨年12月26日に中国国営の中国中央テレビ(CCTV)が報じたと北京から伝えています。
日本はどうでしょうか。
気象庁は2月20日に夏の予報をだしていて、今夏も猛暑になりそうだということです。


<驚いたことに北京北西部では52℃にまで >

また、驚いたことに、「2023年の夏、首都北京は記録的な暑さに見舞われ、北西部の乾燥地帯では気温が観測史上最も高い52度まで上昇した」とも伝えています。52℃などという暑さは想像を超えた暑さではないでしょうか。


<気候変動の経済に与える影響は巨額 >

実は、地球温暖化による気候変動はただ暑いというだけではありません。世界経済にとても大きな経済的損失を与えています。
二つの報告があります。
一つ目の報告は18年前の2006年に英国で発表されました。

◎GDPの5%~20%相当の損失
…ニコラス・スターン博士の報告

元世界銀行のチーフ・エコノミストだったニコラス・スターン博士(Sir Nicholas Stern)が気候変動の経済に与える影響の試算をされています。
博士は2006年に「気候変動と経済」(The Economics of Climate Change)と題する報告を英国政府に提出しました。
環境省がWebsiteでスターン博士のレビューを紹介していますので見てみましょう。
スターン博士は報告の中で、
「気候変動に対して対策を何も講じないでいると、GDPの5%、最悪の場合には20%に相当する損失が出る。」 と警鐘を鳴らしています。
この報告は、往時のブレア首相に報告されています。
二つ目は、昨年2023年の10月11日に、世界的保険機構のロイズ・オブ・ロンドンとケンブリッジ・リスク研究センターとが行った共同研究の結果です。ロイター通信が伝えています。

◎今後5年間で5兆ドルの経済損失

ロイズとケンブリッジ・リスク研究センターとの共同研究による推計では、気候変動による異常気象によって農産物生産や食品・飲料不足が増えればという条件付きではありますが、今後5年間で5兆㌦の経済損失が生ずる可能性があるということです。
日本のGDP:国内総生産額が4.21億ドル(年額、2023年推計内閣府)と推計されていますから、5年間累計で5兆ドルが如何に巨額なものかがわかります。


<原子力発電の再評価は難しいでしょうか>

ところで、広く知られる通り、原子力発電は発電段階で温室効果ガスのCO2を出さない、“脱炭素”電源です。

それだけに、これまで述べてきたとおりの事情も踏まえて、改めて原子力発電の持つ力を考えなおす時が来ているように思いますが、いかがなものでしょうか。


 
理事長 桝本 晃章

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