原子力総合パンフレット Web版

4章 原子力施設の規制と安全性向上対策

自主的・継続的な安全性向上への取り組み

1

原子力安全推進協会の設立

原子力発電所の安全性向上を目的に、2012年11月、「(一社)原子力安全推進協会(JANSI、Japan Nuclear Safety Institute)」が発足しました。
協会では、国内外の関係機関と密接に連携することによって、諸外国の情報などを収集し、技術評価において事業者の意向に影響されない独立性をもったしくみや体制を構築し、事業者に対して客観的な評価、提言・勧告を行います。重大事故(シビアアクシデント)のほか、事業者の安全性評価書の体系化やリスクマネジメント体制の構築などにも取り組まれています。

2

原子力リスク研究センターの設立

日本の原子力産業界が継続的に原子力施設のリスクを評価し、管理していくことを支援するために、2014年10月、(一財)電力中央研究所内に「原子力リスク研究センター(NRRC、Nuclear Risk Research Center)」が設置されました。
原子力施設で発生するあらゆる事故を想定したうえで、その発生頻度や発生した場合の影響を定量的に解析して「リスク」を算出し、安全性を評価する「確率論的リスク評価(PRA、Probabilistic Risk Assessment)」という方法があります。NRRCでは、このPRAやリスク情報を活用した意思決定、リスクコミュニケーションの最新手法を開発し用いることで、高いレベルの原子力施設の安全性を実現する手法を事業者や産業界に提供されています。

原子力リスク研究センターとの連携体制

原子力リスク研究センターとの連携体制

出典:電気事業連合会「原子力コンセンサス」より作成

3

自主的な安全性向上に向けた取り組み

福島第一原子力発電所事故の経験を踏まえ、原子力規制委員会によって、新規制基準へ適合性が確認された以降も事故のリスクはあるものとして、事業者は、自主的・継続的な安全性向上に向けた取り組みを継続することが重要です。
これまでに事業者は、リスク情報を経営判断に反映されるしくみの導入や、PRA構築に向けた体制の整備、緊急時の対応の能力向上などの自主的な取り組みを続けています。
また、JANSIの客観的な評価、提言・勧告やNRRCの安全対策の知見など活用しながら、安全性向上対策が進められています。
これらに加え、事業者はリスク情報を活用した意思決定(Risk-Informed Decision Making : RIDM)を発電所のマネジメントに導入することとし、その基本方針・アクションプランなどを「リスク情報活用の実現に向けた戦略プラン及びアクションプラン」として取りまとめました。これを着実に遂行することで、規制の枠にとどまらない自律的な発電所の安全性向上の実現を目指すこととしています。

RIDMの導入により目指す姿

RIDMの導入により目指す姿

出典:電気事業連合会「原子力コンセンサス」より作成

4

原子力エネルギー協議会の設立

原子力発電所などの安全性をより高い水準に引き上げることを目的に、原子力事業者やメーカー、関係団体などによって、2018年7月1日、「原子力エネルギー協議会(ATENA、Atomic Energy Association)」が設立されました。
原子力産業界が、規制の枠に留まらない自律的かつ継続的な安全性向上の取り組みを行い、それらを定着させていくために、原子力産業界全体の知見やリソースを効果的に活用して、規制当局などとも対話を行いながら効果ある安全対策を立案し、原子力事業者の現場への導入を促す活動を着実に進めるとしています。

原子力エネルギー協議会の役割

原子力エネルギー協議会の役割

①原子力産業界全体で共通課題の解決に取り組み、原子力事業者に効果的な安全対策の導入を促す
②安全性向上という共通の目的の下、規制当局と対話する
③さまざまなステークホルダーと安全性向上の取り組みに関するコミュニケーションを行う

出典:原子力エネルギー協議会 ホームページより作成

5

美浜原子力緊急事態支援センターの設立

福島第一原子力発電所の事故対応の教訓を踏まえ、事故が発生した場合でも、多様かつ高度な災害対応ができるよう、2016年3月に、「原子力緊急事態支援組織」が設立されました。その後、活動拠点となる福井県美浜町の施設が完成し、同年12月17日から、「美浜原子力緊急事態支援センター」として本格運用が開始されました。
原子力災害時に速やかに発災事業所へ遠隔操作ロボットなどの資機材やそれらの操作要員を派遣し、発災事業者と協働して対応にあたります。また、通常時は、支援に必要な資機材を管理・運用するとともに、各事業者のロボットなどの操作要員の訓練が実施されています。

美浜原子力緊急事態支援センターの活動

美浜原子力緊急事態支援センターの活動

出典:日本原子力発電(株)ホームページより作成

ワンポイント情報

リスクとハザード

「リスク」と「ハザード」はともに日本語訳では「危険」と訳しますが、この二つの言葉には大きな違いがあります。
「ハザード」は損害をもたらしうる原因となるもので、「リスク」は実際にそれが起こって現実の危険となる可能性を意味します。
リスクは「ハザードの発生確率」と「損害の規模」で表され、原子力発電所では、ハザードの発生確率と損害の規模を下げるための安全性向上対策を行っています。その対策によって、原子力災害に対するリスクを低減させる取り組みを進めています。さらに、事業者はハザードの発生確率と損害の規模を定量的に解析してリスクを算出し、安全性を評価する「確率論的リスク(あるいは安全)評価(PRA)」を用いて自主的な安全対策を進めています。

次へ
前へ
ページトップ
日本のエネルギー選択の歴史と原子力

日本のエネルギー選択の歴史と原子力

エネルギーミックスの重要性

エネルギーミックスの重要性

日本のエネルギー政策〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策
〜各電源の位置づけと特徴〜

日本のエネルギー政策〜2030年、2050年に向けた方針〜

日本のエネルギー政策
〜2030年、2050年に向けた方針〜

エネルギーの安定供給の確保

エネルギーの安定供給の確保

エネルギーの経済効率性と価格安定

エネルギーの経済効率性と価格安定

環境への適合

環境への適合

原子力の安定的な利用に向けて〜再稼働、核燃料サイクル、使用済燃料の中間貯蔵〜

原子力の安定的な利用に向けて
〜再稼働、核燃料サイクル、使用済燃料の中間貯蔵〜

原子力の安定的な利用に向けて〜高レベル放射性廃棄物〜

原子力の安定的な利用に向けて
〜高レベル放射性廃棄物〜

国際的な原子力平和利用と核の拡散防止への貢献

国際的な原子力平和利用と核の拡散防止への貢献

〈参考〉世界の原子力発電の状況

〈参考〉世界の原子力発電の状況

原子力開発の歴史

原子力開発の歴史

日本の原子力施設の状況

日本の原子力施設の状況

原子力発電のしくみ

原子力発電のしくみ

原子炉の種類

原子炉の種類

原子力発電所の構成

原子力発電所の構成

原子力発電の特徴

原子力発電の特徴

原子力発電所の廃止措置と解体廃棄物

原子力発電所の廃止措置と解体廃棄物

核燃料サイクル

核燃料サイクル

再処理と使用済燃料の中間貯蔵

再処理と使用済燃料の中間貯蔵

高レベル放射性廃棄物

高レベル放射性廃棄物

低レベル放射性廃棄物

低レベル放射性廃棄物

原子力のイノベーション〜革新的な原子力技術への挑戦〜

原子力のイノベーション
〜革新的な原子力技術への挑戦〜

暮らしの中で活躍する放射線

暮らしの中で活躍する放射線

放射線と放射能の性質

放射線と放射能の性質

放射能・放射線の単位と測定

放射能・放射線の単位と測定

被ばくと健康影響

被ばくと健康影響

外部被ばくと内部被ばく

外部被ばくと内部被ばく

身のまわりの放射線

身のまわりの放射線

放射線被ばくによるリスク低減とモニタリング

放射線被ばくによるリスク低減とモニタリング

原子力発電所の規制と検査制度

原子力発電所の規制と検査制度

新規制基準を踏まえた原子力施設の安全確保

新規制基準を踏まえた原子力施設の安全確保

原子力発電所の地震の揺れや津波・浸水への対策

原子力発電所の地震の揺れや津波・浸水への対策

自然現象や重大事故への対策

自然現象や重大事故への対策

原子力施設のさらなる安全性向上に向けた対策

原子力施設のさらなる安全性向上に向けた対策

自主的・継続的な安全性向上への取り組み

自主的・継続的な安全性向上への取り組み

原子力防災の概要

原子力防災の概要

原子力災害対策と緊急事態の区分

原子力災害対策と緊急事態の区分

初期対応段階での防護措置

初期対応段階での防護措置

被ばくを避けるためにとる行動(防護措置)

被ばくを避けるためにとる行動(防護措置)

平常時と原子力災害時の住民の行動

平常時と原子力災害時の住民の行動

廃炉への取り組み〜中長期ロードマップ、燃料デブリ〜

廃炉への取り組み
〜中長期ロードマップ、燃料デブリ〜

廃炉への取り組み〜汚染水対策、処理水の取り扱い〜

廃炉への取り組み
〜汚染水対策、処理水の取り扱い〜

周辺住民や飲食物への影響

周辺住民や飲食物への影響

原子力施設と法律

原子力施設と法律

原子力損害の賠償

原子力損害の賠償