原子力総合パンフレット Web版

日本のエネルギー事情と原子力政策

国際的な原子力平和利用と核の拡散防止への貢献

原子力の平和利用については、「核不拡散」、「原子力安全」、「核セキュリティ」の確保が重要とされています。

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国際的な原子力の平和利用

福島第一原子力発電所の事故後も、エネルギー需要の拡大や地球温暖化対策の観点から、原子力発電の拡充や新しい発電所の導入を計画する国が増加しています。
とくに、アジア諸国では、産業の発展や生活の向上など、急速な経済成長にともなって増加する電力需要をまかなうため、原子力の導入が進められています。さらに、トルコやインドネシアなどでも新規建設が計画され、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえ、一層の安全性向上に取り組む日本の海外における原子力開発への貢献に期待が寄せられています。
しかし、原子力関連の技術や機材、核物質は、軍事転用につながる心配や、一国の事故が周辺諸国にも大きな影響を与えてしまう可能性があるため、原子力の平和利用については、「核不拡散(Safeguards)」、「原子力安全:原子力事故の防止に向けた安全性の確保(Safety)」、「核セキュリティ:核テロリズムの危険への対応(Security)」の3Sの確保が重要とされています。

専門情報:外務省「原子力の平和的利用」

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IAEAの保障措置

国際原子力機関(IAEA、International Atomic Energy Agency)は、原子力の平和利用と新たな核兵器国の出現を防止するため、アメリカのアイゼンハワー大統領による「アトムズ・フォー・ピース」の国連演説を受けて、1957年に設立されました。
IAEAでは、各国の原子力の平和利用の活動が、軍事目的に転用されていないことを監視し、転用があった場合は、速やかにそれを検知する「国際保障措置」という活動を行っています。

国際保障措置では、各国の核物質の在庫や変動を計る「計量管理」や「封じ込め/監視」をはじめ、各国の報告に基づき、実際に査察官が原子力施設に立ち入る「査察」などが行われています。日本は、すべての原子力施設の核物質について、この国際保障措置を受け入れています。
日本は、IAEAの国際保障措置の強化・効率化に積極的に対応した結果、申告された核物質の転用を示す兆候や未申告の核物質および原子力活動を示す兆候もないため、「すべての核物質が平和的な活動のなかにとどまっている」との評価を2004年に得ました。その結果、査察を無通告で実施することなどにより、査察の回数の削減などの統合保障措置が適用されてきています。

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二国間原子力協力協定

原子力の平和利用の推進と核不拡散などの観点で、核物質や原子炉などの主要な原子力関連の技術や機材を移転する際に、移転先の国から平和利用などに関する法的な保証を取り付けるために二国間原子力協力協定を締結しています。
日本は、これまでに、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランス、中国、欧州原子力共同体(EURATOM、European Atomic Energy Community)、カザフスタン、韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、アラブ首長国連邦、トルコ、インドと原子力協力協定を締結してきました。
今後も、諸外国が日本の原子力技術を活用したいと希望する場合、日本は、「二国間原子力協力」のもと、核の拡散防止や原子力の平和利用などを確保しながら、相手国に技術を提供していくことになります。

ワンポイント情報

日米原子力協力協定

日本の原子力開発は、アメリカの協力を通じて進められてきました。1955年にアメリカから日本へ濃縮ウランを貸与するための日米原子力研究協定が調印され、日本に初めて研究用の原子炉が導入されました。1958年には、日米動力協定が調印され、研究用の動力試験炉(JPDR)に必要な濃縮ウランの供与が約束されました。この協定は1958年、1963年に改正され、協力の範囲を商業用軽水炉の導入まで拡大されています。
現在の日米原子力協力協定は、1988年7月に発効され、原子力の平和利用や核不拡散、核セキュリティの確保などを国際的に確保しながら原子力を利用する体制を強化するために重要な役割を担ってきました。2018年7月には30年の有効期間を迎えることになっています。

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核兵器不拡散条約(NPT)

破滅的な核戦争の危険を回避するため、核兵器そのものとその生産に必要とされる物資・機材の移転を禁止する条約(核兵器不拡散条約:NPT、Non Proliferation Treaty)が、1968年7月1日に署名開放され、1970年3月5日に発効されました。日本は、1970年2月に署名し、1976年6月に批准しています。2017年4月現在、締約国は191か国・地域、非締約国はインド、パキスタン、イスラエル、南スーダンとなっています。

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核セキュリティ強化への貢献

捜査当局によって押収、採取された核物質の組成や物理・化学的形態などを分析し、その物質の出所や輸送経路などを分析・解析する技術を「核鑑識」といいます。核鑑識技術により、テロなどで使用された核物質の起源や犯人を特定し、刑事訴追できる可能性を高めることで、核テロなどを抑止する効果があります。
日本は、核鑑識技術を確立し、これを国際社会と共有することにより、国際的な核セキュリティ体制の強化に貢献しています。

ワンポイント情報

世界各国の原子力政策(2017年11月末時点)

原子力発電の利用を進める国

アメリカ

2017年6月、トランプ大統領は、エネルギー分野におけるアメリカの圧倒的優位を確立する“六つのイニシアチブ”の1番目で「原子力を再生、拡大する」と表明。

イギリス

2000年代半ば以降、北海油田の生産量減少や地球温暖化対策といった理由により、再生可能エネルギーと並び原子力発電を推進。老朽施設を代替し将来の設備容量を確保すべく、11基計画中で複数の建設プロジェクトが進行。

フランス

現在の原子力発電比率76%。2025年までに50%に縮減すると定めたエネルギー転換法を2015年に公布。今後の新規建設は、現在の設備容量を上限に容認。2018年、最新型炉(EPR)が初臨界予定。

ロシア

現状19%の原子力発電比率を2030年25〜30%、2025年45〜50%に拡大する目標。輸出にも積極的であり、現時点で、新興国や中東欧を中心に、国外で運転中7基、建設中4基、受注25基。

中国

外国技術を導入・国産化し、新興国を含め国際展開を図る戦略。福島第一原発事故後に24基が運転開始し、現在は運転中37基、建設中20基、計画中40基。設備容量を2020年までに8割増とする目標。

インド

発電設備増強が喫緊の課題。現在、運転中22基、建設中6基、計画中19基。2032年までに、設備容量を現状の620万kWから6,300万kWまで大幅に拡大する計画。

スウェーデン

1979年のアメリカ・スリーマイルアイランド原発事故を受け、国民投票で12基の全廃を決定。その後、電気料金の上昇や地球温暖化への対応から、原子力発電の建て替えを認める法律を2010年に制定。

原子力発電の利用から方針を転換した国

ドイツ

段階的に原子力発電を廃止し、2022年までにはすべての原子炉を廃止予定。現時点では、8基の原子力発電が稼働しており、現在の原子力発電比率は13%。

韓国

2017年5月発足の文政権は、新規原発の建設中断を柱とする脱原発政策を掲げたが、有識者らでつくる委員会は、国民の意見をもとに、建設中の新古里原発5、6号機について建設再開を勧告。これを受け、文政権は10月22日、建設の早期再開を表明。現在、韓国で運転中の原子炉は24基、発電比率は約30%。

台湾

2016年の総統選挙で勝利した民進党政権が、建設中1基の建設中止と、運転中6基の運転延長を認めないことを決定。2017年1月、2025年末までにすべての原子力発電の運転を停止するとした法律の改正案を国会で承認。

スイス

福島第一原発事故後の2011年5月に、「2050年エネルギー戦略」を発表。5基の既存の原子力発電を段階的に廃止し、建て替えはしない方針を提示。

原子力発電の導入に関心をもつ国

ベトナム

2009年末、4基の原子力発電の建設が決定。福島第一原発事故後も準備を進めてきたが、2016年11月、主に経済面から原発計画を撤回。高効率な火力発電や再生可能エネルギーに置き換える方針。

アラブ首長国連邦

世界屈指のエネルギー輸出国だが、化石資源の温存や地球温暖化への対応から、原子力発電と再生可能エネルギーを増やす方針。最初の原子力発電は2017年以降に運転を開始予定。2020年までに計4基を建設し、電力需要の約4分の1をまかなう見込み。

出典:経済産業省資源エネルギー庁 資料などより作成

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