原子力総合パンフレット Web版

放射線と放射線防護

さまざまな被ばくと健康影響

放射線を受けることを被ばくといい、被ばくしたときに現れる健康影響には、確定的影響(組織反応)と
確率的影響の二種類があります。

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外部被ばくと内部被ばく

放射線を受けることを被ばくといいます。そして、放射性物質などの放射線の発生源(線源)が、体の外にあり、体外から放射線を受けることを外部被ばくといいます。
空間の放射線量が高いところがある場合は、その場所から離れる、放射線をさえぎる建物に避難する、周辺を除染することで、被ばくを抑えることができます。
また、衣服や皮膚に放射性物質が付着した状態を汚染といいます。汚染した場合は、洗浄したり、着替えたりすることで被ばくを減らすことができます。
一方、呼吸や飲食によって放射性物質を体内に取り込んだり、皮膚に付着した放射性物質が傷口から体に入ったりすることによって、体の中に取り込まれた線源から放射線を受けることを内部被ばくといいます。
内部被ばくは、マスクの着用などで吸入を防いだり、汚染した飲食物の摂取制限などを行うことによって抑えることができます。また、傷口は、放射性物質を取り除いて(除染)から治療します。

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全身被ばくと局所被ばく

全身に放射線を受けることを全身被ばくといいます。また、体のある部分だけに放射線を受けることを局所被ばくといいます。
放射線を受ける臓器・組織により、同じ線量でも体への影響が異なります。

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急性被ばくと慢性被ばく

放射線による体への影響は、被ばく線量の合計が同じであっても、どれだけの期間をかけて受けたのかによって異なります。
急性被ばくとは、瞬時もしくは、短時間に放射線を被ばくすることです。一方、慢性被ばくとは、長期間にわたって繰り返し、あるいは連続的に少しずつ放射線を被ばくすることです。
慢性被ばくでは、同じ線量であっても急性被ばくに比べて、その障害の程度が小さいと考えられており、国際放射線防護委員会(ICRP、International Commission on Radiological Protection)によると、2分の1程度としています。
その理由は、私たちの体の細胞は、傷ついた遺伝子を修復する機能をもっているためとされています。

急性被ばくと慢性被ばくの違い

●放射線を短時間で一度に受けた場合

放射線を短時間で一度に受けた場合

●比較的弱い放射線を長時間受け続けた場合

比較的弱い放射線を長時間受け続けた場合

出典:日本原子力文化財団「いま知りたいからだと放射線」

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確定的影響(組織反応)と確率的影響(発がんと遺伝性影響)

放射線を受けたときに現れる健康影響には、以下のように二種類あります。

【確定的影響(組織反応)】

ある一定の線量以上の放射線による被ばくをしたときに現れる影響を、確定的影響(組織反応)といいます。
高い線量の放射線によって多数の細胞が死ぬことにより、組織や臓器の働きが悪くなることが原因です。不妊、脱毛、紅斑、白血球減少などの症状が現れます。受けた放射線量が高いほど、症状が重篤になります。
このある一定の線量を「しきい値」といい、症状によってそれぞれ発症のしきい値が異なります。しきい値以下の被ばくでは発症しません。

【確率的影響】

確率的影響とは、高い線量でも低い線量でも、被ばくから数年以上たってから現れる可能性がある、発がんと遺伝性影響を指します。
私たちの体は、数十兆個の細胞が集まってつくられています。細胞の中には細胞核があり、その中にDNA(デオキシリボ核酸)があります。脳の細胞のようにずっと同じものもありますが、ほとんどの細胞は、細胞分裂によって新しく生まれ変わります。このとき、元どおりの働きをするための情報を、新しい細胞に伝えるのがDNAの役目です。
DNAは、タバコや酒、食事、化学物質、放射線などによって傷つけられていますが、細胞のもつ能力で治されています。
一つの細胞で1日に1万個以上のDNAの傷ができて、それを治すことがくり返されていると考えられています。DNAの傷が治らなかったりすると、体に障害が出たりします。つまり、がんは、細胞の遺伝子に傷がつくと必ず発生するものではありません。
発がんに至るまでには、遺伝子の傷が完全に修復されないまま細胞が生き続け、何段階にもわたる変異が重なることなどによって細胞のがん化が起きます。そのため、発がんは、ある確率で発生し、受けた放射線量が多いほど発がんの確率が高くなります。
遺伝性影響は、放射線によって精子や卵子などの生殖細胞の遺伝子に傷がつき、完全な修復がされずに変異が残り、そのために子供や孫に異常が現れることを指します。動物実験では、遺伝性影響が確認されていますが、人においては、これまでに遺伝性影響は確認されていません。
放射線によって生じたがん、遺伝性影響は、それ以外の要因によって生じたものと区別できません。したがって、がん、遺伝性影響は、多数の被ばく者集団と非被ばく者集団を比較することによって判断しなければなりません。

放射線の人体への影響

放射線の人体への影響

※しきい値:ある作用が反応を起こすか起こさないかの境の値のこと

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

確定的影響(組織反応)と確率的影響

確定的影響は、しきい値以下に抑えることで影響をなくす。
確率的影響は、しきい値は無いと仮定し、合理的に可能な限り線量を低くすることで影響の現れる確率を容認できるレベルにする。

確定的影響(組織反応)と確率的影響

出典:(公財)放射線影響協会「放射線の影響がわかる本」より作成

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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放射線の健康影響についての研究

がんや白血病の原因が、放射線の影響であるかどうかは、個人を検査しても識別することはできません。それは、喫煙や食生活など、がんにはさまざまな要因があり、それらが長年にわたり作用することで起こると考えられているためです。そのため、疫学調査によって、被ばくした人のグループと被ばくしていない人のグループの発がん率を比較し、これをもとに影響の有無を判断することになります。
多くの人々のグループについて調査をすることによって、低線量の放射線が健康に与える影響を明らかにしようとする研究が進められています。

【原爆による放射線の影響】

今日の放射線の健康影響などの科学的な知見は、広島と長崎の約12万人の寿命調査集団における疫学調査が基礎となっています。この集団には、爆心地から10km以内で被ばくした9万3,741人と、原爆が投下されたときに、市内に不在だった2万6,580人が含まれています。
その結果では、放射線による発がんのリスクは、1,000ミリシーベルトあたり、約50%増加し(相対リスクで1.5)、被ばく線量に比例することが分かっています。
しかし、100ミリシーベルト以下の低線量被ばくでは、被ばくの発がんが、ほかの発がん要因や生活習慣、地域差による発がんに隠れてしまって区別ができないため、被ばく線量が100ミリシーベルト程度では、被ばくのリスクの増加に統計学的に有意な差が認められません。

※相対リスクとは、被ばくしていない人を1としたとき、被ばくした人のがんリスクが何倍になるかを表す値。

専門情報:(公財)放射線影響研究所 原爆被爆者における固形がんリスク

【放射線と生活習慣によるがんのリスク】

国立がん研究センターの研究によると、継続した喫煙は、1,000~2,000ミリシーベルト、運動不足は、200~500ミリシーベルト、野菜不足は、100~200ミリシーベルトの被ばくのリスクと同等とされています。

がんになるリスクとその要因

がんになるリスクとその要因

●放射線は、広島・長崎の原爆による瞬間的な被ばくを分析したデータ(固形がんのみ)であり、長期にわたる被ばくの影響を観察したものではない

●そのほかは、国立がん研究センターの分析したデータである

  • ※対象:40〜69歳の日本人
  • ※相対リスク(リスクがないグループと比べて、何倍がんになるリスクが増加するか)で示している
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