原子力総合パンフレット Web版

6章 福島第一原子力発電所の廃止措置に向けた取り組み

周辺住民や飲食物への影響

年間の積算線量によって「避難指示解除準備区域」、「居住制限区域」、「帰還困難区域」の三つの地域に区分されています。 飲食物に含まれる放射性物質を検査し、基準値を上回るものは、摂取制限や出荷制限が行われています。

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周辺環境への放射線影響

福島第一原子力発電所の事故では、主に放射性ヨウ素や放射性セシウムが放出されました。すべての放出量(ヨウ素換算)は、57万~90万テラベクレル(テラは1兆)と推定されています。
これらの放射性物質は、主に2011年3月12日~15日にかけて放出されました。その後、風に乗って広まり、やがて雨によって地上に降下しました。政府は、事故直後から周辺住民の放射線による外部被ばくや内部被ばくを減らすための措置を講じました。
現在では、1~3号機からの放射性物質の放出量が大幅に減り、大気中への放出が抑えられているため、大気中に放射性物質は、ほとんど検出されなくなっています。

福島県内の空間放射線量の推移

福島県内の空間放射線量の推移

※帰還困難区域で実施した走行サーベイ(2018年7月10~13、17、18日に実施)の測定結果を追加

※国土地理院「基盤地図情報数値標高モデル(10mメッシュ)」、国土交通省国土政策局「国土 数値情報(行政区界、道路)」を使用し作成。

出典:ふくしま復興ステーション

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住民の帰還

2013年11月、原子力規制委員会は、避難指示解除の基本的な考え方として、1年間の被ばくが20ミリシーベルト以下となる地域を「避難指示解除準備区域」に設定しています。
インフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧し、子供の生活環境の除染が進捗した段階で、県や市町村、住民との十分な協議を踏まえ、避難指示を解除することを示しました。

政府は、早期帰還支援と新生活支援をより一層強化し、事業や生活の再建・自立に向けた取り組みを拡充するため、「原子力災害からの福島復興の加速のための基本方針」を2016年12月20日に閣議決定しました。

関連情報(詳細):福島県「福島復興ステーション」

避難者の状況

避難者の状況

出典:ふくしま復興のあゆみ(第26版)

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県民健康調査

【事故直後のスクリーニング】

2011年3月12日から住民に対して、服や体の表面についている放射性物質の量を測定して、被ばくや放射性物質による汚染に対応した処置(被ばく医療)が必要かどうかを判断するスクリーニングが実施されました。これまでに延べ人数で20万人以上がスクリーニングを受けましたが、治療が必要な人はいませんでした。

【事故直後から4か月間の外部被ばく】

福島県では、2011年3月11日以降の行動を把握し、7月11日までの4か月間に外部被ばくした量を推計しました。放射線の業務従事経験者と推計期間が4か月未満の方を除いた約46万人の推計結果をみると、約94%が2ミリシーベルト未満で、最高値は25ミリシーベルト、平均値は0.8ミリシーベルトとなっています。福島県の検討委員会では、「放射線による健康影響があるとは考えにくい」と評価しています。

【甲状腺超音波検査】

2011年10月から実施された先行調査、2014年4月からの1回目の本格調査に続き、2016年5月からは2回目の本格調査が実施されました。震災時に0歳~18歳までの全県民(県外への避難者も含む)約38万人と事故直後の2011年4月2日から1年間に生まれた新生児が対象とされています。
2回目の本格調査では、約20万人が検査を受診し、「A1判定(結節やのう胞なし)」が35.1%、「A2判定(5mm以下の結節や20mm以下ののう胞あり)」が64.2%、「B判定(5.1mm以上の結節や20.1mm以上ののう胞あり)」が0.7%、「C判定(直ちに二次検査を要する)」が0%でした。

【内部被ばく検査】

2011年6月~2018年3月の累計で約33万人がホールボディカウンターによる内部被ばく検査を受け、1ミリシーベルト未満が33万727人、1~3ミリシーベルトが26人、それ以上は0人でした。

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飲食物の摂取制限と出荷制限

チェルノブイリ原子力発電所事故では、事故直後に飲食物の適切な摂取制限がなされず、住民が汚染された飲食物を摂取したことが内部被ばくの要因となりました。
一方、福島第一原子力発電所事故では、2011年3月17日に放射性ヨウ素と放射性セシウムの暫定規制値を定め、水や牛乳、葉物などの農作物、海産物などの放射性物質を検査し、暫定規制値を上回るものについては、摂取や出荷の制限が行われました。
これにより内部被ばくは低減されましたが、搾乳した原乳を廃棄せざるをえない状況となるなど、農業や漁業に大きな影響を与えました。
2012年4月1日からは、新基準値に基づく検査が行われており、現在でも一部の食品の出荷制限が続けられています。
2018年4月~2019年3月に検査した299,424件のうち、基準値を超えた食品は313件で、全体に占める割合は0.10%でした(出典:厚生労働省資料)。基準値を超える割合は、年々低下してきています。
また、放射性物質濃度が全体として低下傾向にあり、基準値を超える品目も限定的となっていることから、検査の合理化や効率化、検査対象としている自治体や品目の見直しなどが行われています。

専門情報:厚生労働省「食品中の放射性物質」

米の全量全袋検査の結果

(2018年8月21日~2019年11月27日)

米の全量全袋検査の結果

野菜・果物、畜産物等の検査結果

(2019年4月1日~10月31日)

野菜・果物、畜産物等の検査結果

※国のガイドラインに基づき福島県が実施している検査

出典:福島県資料より作成

ワンポイント情報

住民の被ばくと健康影響に対する評価

国際的な専門家集団であるUNSCEARは、2014年4月に「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」(2013年報告書)を公表しました。
その後も継続してフォローアップを行い、「UNSCEAR2017白書」が公表されました。2013年報告書の評価や結論に変更はないとしています。
福島県の成人住民が、事故発生から1年の間に受けた放射線の推計量は、約1~10ミリシーベルト、とくに放射線の影響を受けやすい1歳児では、成人の約2倍でした。
甲状腺への影響については、事故当初にいた場所によって異なりますが、成人が最大35ミリシーベルト、1歳児が約80ミリシーベルトと推計されました。この数値は、チェルノブイリ事故による平均の甲状腺被ばくの約500ミリシーベルトと比較すると大幅に低いため、放射線の影響により甲状腺がんが多数発生すると考える必要はないとしています。
また、福島県が実施している超音波による甲状腺検査で、比較的多数の甲状腺異常が見つかっています。しかし、これは、事故の影響を受けていないほかの地域で行われた類似の調査結果と一致しています。このような集中的な精度の高い検診を行えば、通常は検出されなかったであろう甲状腺異常が、今後、比較的多く見つかると予測しています。
胎児や幼少期・小児期に被ばくした人の白血病や乳がんの発生数の変化は、今のところ不確かさの範囲にとどまること、また、被ばくした人の子孫に遺伝性の影響が増加することはないとしています。
このほか、世界保健機関(WHO、The World Health Organization)でも健康評価が行われ、がんの発生率が増加する可能性は低いとしています。
日本学術会議では、生後0~18歳の子どもにスポットを当て、これまでに発表されている放射線の影響や線量評価に関する科学的知見の妥当性を確認しています。

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