原子力総合パンフレット Web版

2章 原子力開発と発電への利用

高レベル放射性廃棄物

日本は、高レベル放射性廃棄物を30〜50年程度、一時貯蔵して冷却した後、最終的に地下300mより深い安定した地層中に処分する方針です。

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高レベル放射性廃棄物の処分

再処理工場では、原子力発電所の使用済燃料から再利用できるウランやプルトニウムを回収した後に、核分裂生成物を主成分とする放射能レベルの高い廃液が残ります。
この廃液は、高温で溶かしたガラス原料とともにステンレス鋼製の容器(キャニスタ)に入れ、冷やして固め、ガラス固化体とされます。これが、高レベル放射性廃棄物です。
日本では、ガラス固化体を30〜50年程度、一時貯蔵して冷却した後、最終的に地下300mより深い安定した地層中に処分することを、基本方針としています。
高レベル放射性廃棄物の放射能レベルが十分低くなるまで、数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があり、その最も確実な方法として地層処分が採用されました。

ガラスは水に溶けにくく、化学的に安定しているため、長期間にわたって放射性物質を閉じ込めるのに優れています。地下深い層は、石油や石炭、鉄などの鉱床が何百万年、何千万年にわたって安定した状態で保存されてきました。また、酸素濃度が低く、地下水の動きもゆっくりしているため、金属の腐食は極めて遅くなります。こうした安定した岩盤などの「天然バリア」と、厚い金属製容器や緩衝材(粘土)といった「人工バリア」を組み合わせた「多重バリア」を構築して、安全に処分をすることとしています。
ガラス固化体は、1000年間で放射能が約3,000分の1になり、数万年後には、そのもとになった燃料の製造に必要な量のウラン鉱石(ガラス固化体1本あたり約600トン)の放射能と同程度になります。
現在、日本を含めて、国際的に地層処分を進めることが共通の考え方になっており、海外でも高レベル放射性廃棄物の地層処分に向けて、処分の実施主体の設立や資金確保などの法整備、処分地の選定、必要な研究開発が進められています。
国際原子力機関(IAEA)が策定した「使用済燃料管理及び放射性廃棄物管理の安全に関する条約」では、放射性廃棄物は発生した国で処分するべきと示されており、各国とも自国で発生した放射性廃棄物は自国内で処分することが原則となっています。日本も2003年11月に、この国際条約を批准し、国内で処分することを前提とした「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」を制定しています。

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高レベル放射性廃棄物の発生量

2020年3月までに発生している原子力発電の使用済燃料をガラス固化体に換算すると約2万6,000本相当となります。そのうち、国内で処理されたもの、海外から返還※されたものを合わせて国内で貯蔵・管理を行っているガラス固化体は、2,492本(2020年3月末)あります。
将来発生する量を勘案して4万本以上のガラス固化体を埋設できる施設が計画されています。
一般廃棄物と産業廃棄物の発生量の合計は、国民一人当たり年間約3.4トンです。それに対して、放射性廃棄物の発生量は、国民一人当たり年間131グラム程度、そのうち高レベル放射性廃棄物は4グラム程度です。

※日本では、原子力発電の使用済燃料の再処理を、イギリスとフランスに委託してきました。この再処理から発生した高レベル放射性廃棄物のガラス固化体は1995年から、海上輸送により返還されています。

日本で一日に発生する廃棄物の量

日本で一日に発生する廃棄物の量

出典:環境省 一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成29年度)について
環境省 産業廃棄物の排出及び処理状況等(平成28年度実績)について
原子力規制庁 原子力施設に係る平成29年度放射線管理等報告について ほか

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高レベル放射性廃棄物の一時貯蔵

【輸送容器(キャスク)の受入れ】

専用車両で搬入したキャスクを、受入れ建屋の天井クレーンで輸送容器一時保管区域に吊り降ろされます。

【ガラス固化体の抜き出し】

受入れ建屋の天井クレーンで吊り上げ、輸送容器搬送台車に搭載し、輸送容器一時保管区域からガラス固化体抜出し室へ移送されます。その後、ガラス固化体検査室の補助クレーンでキャスクのふたが取り外されます。
次に、ガラス固化体検査室の天井クレーンでキャスク内のガラス固化体が抜き出され、ガラス固化体仮置架台に一時仮置きされ、空の輸送容器は、検査を行った後、輸送容器一時保管区域で一時保管されます。

【検査】

ガラス固化体検査室の天井クレーンでガラス固化体仮置き架台からガラス固化体が順次取り出され、検査・測定が行われます。

【収納】

検査が終了したガラス固化体は、貯蔵建屋の床面走行クレーンで収納管にたて積みで収納されます。収納管1本あたり9本のガラス固化体が収納されます。冷却は間接自然空冷貯蔵方式で行われ、冷却用の空気はガラス固化体に直接接触しないように収納管の外側を通る構造となっています。

専門情報:日本原燃株式会社「廃棄物管理事業の概要」

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高レベル放射性廃棄物の管理状況

1995年に事業を開始した日本原燃(株)(JNFL)の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(青森県六ヶ所村)の貯蔵容量は、ガラス固化体2,880本です。
2020年11月末現在、これまで再処理を委託してきたフランスやイギリスから返還されたガラス固化体を1,830本受け入れ、貯蔵・管理しています。
さらに、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の再処理技術開発センター(茨城県東海村)で、ガラス固化体316本が貯蔵・管理されています。

高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵概念図

高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)の貯蔵概念図

出典:日本原燃(株)パンフレットより作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

ワンポイント情報

自然や考古学から学ぶガラスや鉄、粘土鉱物の性質

ガラス

古くから石器として用いられてきた岩石の一つに、黒曜石があります。これは、火山から噴出した溶岩が地表付近で急速に冷やされてできたガラス質の岩石で、天然のガラスといえるものです。シリアのユーフラテス川周辺の遺跡で、約8000年前の黒曜石のナイフが発見されましたが、このナイフはずっと地下水に浸されていたにも関わらず、ほとんど風化せず現在でも紙が切れるほどの状態を保っていました。
また、ウランと放射線の関係が知られていなかった約200年前のチェコでは、酸化すると黄色く色づくウランをガラスの着色剤として利用していました。現在でも、ウランを数%ほど含む透明度の高い当時の状態を維持したままのワイングラスやデカンターなどが保存されています。

約8000年前の黒曜石ナイフ

約8000年前の黒曜石ナイフ
写真提供:吉田英一氏(名古屋大学博物館教授)

1995年に、スコットランドで約2000年前にローマ兵によって埋められた数万本以上の鉄釘が発見されました。埋められた釘の周辺のものは錆びていたものの、内部の釘はほとんど錆びずに、そのまま使用できる状態でした。
これは、周辺の釘が侵入してきた地下水中の酸素と反応し錆びることで、内側は酸素の少ない状態が維持されていたためです。鉄には、自らが酸化する(錆びる)ことで周辺のモノを酸化から守るバリアのような働きがあることが分かります。

約2000年前の鉄釘

約2000年前の鉄釘
出典:Miller et al.2000. Waste Management Series 2.PERGAMON

粘土鉱物

日本や世界の各地で、ヒバなどが大量の粘土層などの地層中に埋まった埋没林が発見されています。例えば、イタリアのドナロバという地域で発見された約200万年前の埋没林の木々は、現在でもチェーンソーで加工でき、木材のように燃やすことができるほど保存状態が良好でした。
これは、粘土層によって地下水の動きが抑制されることで木の腐食や変質が抑えられ、当時のままの成分が維持されていたためです。粘土鉱物には、水を吸収すると膨らむ性質もあり、周辺からの地下水の侵入も防いだと考えられます。

約200万年前の埋没林の木

約200万年前の埋没林の木
出典:Miller et al.2000. Waste Management Series 2.PERGAMON

出典:放射性廃棄物パンフレット「チカタビ」

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