原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

エネルギーミックス
〜経済性と環境保全〜

電気料金などの経済性向上や、地球温暖化対応などの環境保全もエネルギーミックスにおける重要な課題となっています。

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経済性

日本の電気料金は、1994年度から2007年度の間において、単純比較では約2割低下しました。2008年度は上半期までの歴史的な原油価格の高騰などによって比較的大きい幅で上昇しましたが、2010年度は原油など燃料価格の低下により2007年度の水準まで戻りました。
2011年以降は、原子力発電の停止にともなう火力発電の利用の増加によって、火力発電の燃料となる石油や石炭、天然ガスなどの輸入額が増えています。こうした燃料価格の高騰に加え、固定価格買取制度による再生可能エネルギー導入の賦課金の上昇によって電気料金が上がっています。
2014年度の家庭の電気料金は2010年度と比べ、約25%上昇し、家計へ影響を与えました。産業用の電気料金は、約38%上昇し、中小企業などの経営を圧迫しました。2014年度以降は大幅な原油価格の下落などの影響により低下しました。2018年度の電気料金は、2010年度と比べて、家庭用は約23%、産業用は約27%高い状況です。
為替の影響もあるため、単純な比較は困難ですが、電気料金を国際比較すると、日本は決して低い水準にあるとはいえません。電気料金の値上げは、家計へはもちろんのこと、国際競争にさらされている日本企業などへの悪影響があることも懸念されます。

電気料金の推移

電気料金の推移

※電灯料金は、主に一般家庭部門における電気料金の平均単価
電力料金は、自由化対象需要家分を含み、主に工場、オフィス等に対する電気料金の平均単価
平均単価は、電灯料収入、電力料収入をそれぞれ電灯、電力の販売電力量(kWh)で除したもの

出典:経済産業省 資源エネルギー庁資料をもとに作成

ワンポイント情報

固定価格買取制度(FIT制度)

「固定価格買取制度(FIT制度)」は、再生可能エネルギーでつくった電気を、国が決めた価格で電力会社が買い取ることを義務づけたもので、2012年に創設されました。買取費用の一部は、電気料金を通じて国民が広く負担しています。2030年度のエネルギーミックスを達成した場合、買取費用の総額は年間3.7~4兆円程度になると考えられています。
世界では、再エネの発電コストは急速に低下し、ほかの電源と比べてもコスト競争力のある電源となってきていますが、日本では再エネの発電コストは低減しているものの、国際水準と比べれば依然として高いままです。日本で再エネの大量導入を実現するには、低コスト化が必要となっています。そのほかに系統制約の緩和や解消、規制や立地環境という課題もクリアする必要があります。

固定価格買取制度(FIT制度)

出典:経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより作成

固定価格買取制度導入後の賦課金などの推移

固定価格買取制度導入後の賦課金などの推移

出典:経済産業省 資源エネルギー庁ホームページより作成

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環境保全—COP21で採決されたパリ協定

2015年12月にフランスで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、温室効果ガスの排出量の割合が大きいアメリカや中国、インドなどを含めた主要な経済国が参加し、各国が2020年以降の自発的な削減目標を定めることを約束する「パリ協定」が採択されました。
世界全体の目標として、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑える目標が掲げられました。そして、気候変動に脆弱な国々への配慮から、1.5℃以内に抑える必要があることも言及されています。
また、長期的な目標として、今世紀の後半に、世界全体の温室効果ガスの排出量を、生態系が吸収できる範囲に収める目標が掲げられました。これは、人間が活動する際に排出する温室効果ガスの量を実質的にゼロにするという目標です。
このような長期的な目標に向け、各国では5年ごとに温室効果ガスの排出削減の目標を見直すことになりました。さらに、各国の目標の遵守を促すため、各国の削減目標に向けた取り組みや他国への支援などの世界全体の状況を把握するしくみが設けられました。

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環境保全—温室効果ガス排出の削減目標

COP21で採択された「パリ協定」や国連に提出した「日本の約束草案」を踏まえ、日本の地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するための「地球温暖化対策計画」を2016年5月に閣議決定しています。
この計画では、2030年度に2013年度と比べて26%削減する中期的な目標に対して、取り組むべき対策や国の施策を明らかにし、削減目標の達成へ向けた道筋をつけています。さらに、長期的な目標として2050年までに80%の温室効果ガスの排出量の削減を目指すこととしています。
2018年度の日本の温室効果ガスの総排出量は、12億4,400万トン(速報値)で2013年度の14億1,000万トンと比べると、11.8%減少しました。前年度からの減少要因は、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電の再稼働、またエネルギー消費の減少(省エネ、暖房等)などによってエネルギー起源(燃料の燃焼や電気や熱の使用にともない排出される)のCO2排出量が減少したことなどが挙げられます。
今後、さらに大幅な温室効果ガスの排出削減を進めるためには、徹底した省エネルギーの推進や国民負担の抑制と両立した再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、安全性が確認された原子力発電の活用などにより、エネルギーミックスを実現させる必要があります。また、技術開発の一層の加速化、生活や働き方の変革などの対策を実行していくとされています。
2019年6月には、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」を閣議決定しました。最終到達点として「脱炭素社会」を掲げ、今世紀後半のできるだけ早い時期での実現を目指すとし、2050年までに温室効果ガス排出80%削減に取り組むとしています。エネルギー分野では、火力発電からの二酸化炭素排出の削減をはじめ、再生可能エネルギーの主電源化、水素社会の実現、蓄電池の開発、原子力の活用、省エネルギーの推進などが挙げられています。

パリ協定-主要排出国の削減目標

パリ協定-主要排出国の削減目標

2015年10月1日現在

※2019年11月、アメリカはパリ協定から離脱することを正式に国連に通告したことにより、1年後に正式に脱退となります。

出典:全国地球温暖化防止活動推進センター資料より作成

日本の温室効果ガス排出量と政府目標

日本の温室効果ガス排出量と政府目標

※各年度の排出量および過年度からの増減割合(「2013年度比」)等には、京都議定書に基づ<吸収源活動による吸収量は加味していない。

出典:環境省ホームページより作成

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