原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

エネルギーミックス
〜エネルギーの安定供給〜

資源小国で島国の日本では、エネルギー資源を安定して、かつ経済的に確保することが重要な課題となっています。

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エネルギー確保の歴史

エネルギーを安定的に、必要な量を低廉な価格で確保することを「エネルギー安全保障」といいます。すべての国民にとって、この状態を継続的に維持することが非常に重要です。
日本では、第二次世界大戦後、水力発電や石炭・石油による火力発電を中心に利用・開発を進め、1960年代後半からは、低廉な石油がエネルギーの中心となりました。しかし、1970年代に二度にわたる石油危機を経験し、エネルギー安全保障の観点から、石油だけに頼らないエネルギー源の確保と、それらを輸入する相手国の多様化を進めてきました。
現在、石炭はオーストラリアやインドネシア、ロシア、アメリカなどから、天然ガスは、オーストラリアや東南アジア、中東、ロシアなどから輸入していますが、石油は、依然として80%以上を中東からの輸入に頼っています。
利用分野の多い石油は、できるだけ発電に使う割合を抑え、主に石炭や天然ガスを使う火力発電、ウランを使う原子力発電を中心にまかなわれていました。2010年では、発電量に占める石油の割合は、わずか6%程度に抑制されていました。
しかし、2011年に発生した東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故以降、全国の原子力発電所が停止し、石油や天然ガスなどの利用量が大幅に増えています。
さらに、石油や天然ガスの輸入価格は、輸入する相手国の政治情勢や生産調整などによって大幅に変動するため、日本の経済は影響を大きく受けやすくなっています。
とくに、中東からホルムズ海峡、マラッカ海峡を通って、石油や天然ガスを日本へ運ぶ海路(シーレーン)の安全通行の確保が、エネルギー安全保障上の重要な問題となっています。

日本が輸入する化石燃料の相手国別比率

日本が輸入する化石燃料の相手国別比率
原油
原油
石炭
石炭
天然ガス
天然ガス

(注)四捨五入の関係で合計額が合わない場合がある

出典:※1 石油連盟統計資料、※2 財務省貿易統計より作成

石油や天然ガスを運ぶ海路(シーレーン)

石油や天然ガスを運ぶ海路(シーレーン)
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エネルギー資源の安定確保

2017年度の日本の食料自給率(カロリーベース)は、39%と低く、その向上への取り組みが重要な課題となっています。
一方で、日本のエネルギー自給率(2017年)は、食料自給率よりさらに低く、原子力を国産とした場合でも9.6%しかありません。エネルギー資源である石油や石炭、天然ガス、ウランは、ほとんどを海外からの輸入に頼っています。
これは、経済協力開発機構(OECD、Organisation for Economic Co-operation and Development)加盟35か国のなかでも、ルクセンブルクに次ぐ2番目に低い水準(2017年)となっています。
また、陸続きのヨーロッパ諸国では、国境を越えて送電線や天然ガスのパイプラインが張り巡らされているため、一国で電力を安定的に供給することができなくなった場合でも、発電容量の大きい周辺国との間で電力の輸出入が行われています。例えば、発電電力量の約7割を原子力発電が担うフランスは、原子力発電を利用していないイタリアなどの周辺国へ電気を輸出しています。一方で、ヨーロッパで最もエネルギーを消費しているドイツはフランスなどから電気を輸入しています。ヨーロッパ諸国は国を超えて電力を融通することにより、ヨーロッパ全体で「エネルギーミックス」を進めています。
これに対し、島国の日本は、周辺国とのエネルギーの融通は難しいのが現状です。資源小国で島国の日本にとって、エネルギー資源を安定して、かつ経済的に確保していくことは、国家の基盤にかかわる重要な問題です。
今後、世界のエネルギー需要が増えていくことが予測され、2040年の世界のエネルギー需要量は、2017年の約1.3倍になるとされています。そのうち中国やインドをはじめとする新興国の需要が大きく増加すると予想されています。
こうしたことから、各国によるエネルギー資源の獲得競争が激しくなり、日本のエネルギー資源の安定確保は、より厳しさを増す可能性があると予測されています。

主要国のエネルギー自給率(2017年)

主要国のエネルギー自給率(2017年)
  • ※原子力を国産とした場合の数値となっている。原子力発電の燃料となるウランは、一度輸入すると長時間使用することができ、再処理してリサイクルすることも可能なため、準国産エネルギーとして扱われる。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー2018」より作成

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

ドイツ・フランスを中心とした電力の輸出入(2017年)

ドイツ・フランスを中心とした電力の輸出入(2017年)

出典:(一社)海外電力調査会「海外電気事業統計2019年版」より作成

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

世界の一次エネルギー消費の推移と見通し(石油換算100万トン)

世界の一次エネルギー消費の推移と見通し(石油換算100万トン)

出典:「IEEJアウトルック2020」、(一財)日本エネルギー経済研究所資料より作成

ワンポイント情報

エネルギー安全保障と中東情勢

イランの核開発を制限する見返りにイランの経済制裁や石油取引を緩和することが、2015年にイランとアメリカなど6か国との間で合意されました。その後、アメリカは一方的に、この「イラン核合意」から抜け、2019年5月に、石油の全面禁輸をイランに課しました。こうしたなか、同年6月にホルムズ海峡近くで二隻のタンカーが攻撃を受けました。誰が、何の目的で攻撃を行ったのか不明ですが、ホルムズ海峡近辺で緊張状態が続いています。さらに、同年9月にはサウジアラビア東部にある石油生産設備2か所がドローン機に攻撃され、これにより同国の石油生産能力の半分以上になるといわれる日量570万バレルの石油供給が停止しました。
日本ではエネルギー源の多様化を進めていますが、現在でも石油の8割以上を中東に依存しています。天然ガスも、約2割が中東から輸入されています。このためホルムズ海峡は、日本のエネルギー安全保障上、非常に重要な場所であり、海峡の封鎖や、船舶の安全航行ができない状況が発生すれば、日本は、ガソリンや電気などの料金の上昇、それらの供給停止などの深刻な影響を受ける可能性があります。

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