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原子炉の種類

原子炉には、冷却材として軽水(普通の水)を使う軽水炉のほかに、重水を使う重水炉、炭酸ガスやヘリウムガスを使うガス冷却炉、液体ナトリウムを使う高速炉などがあります。
日本の商業用の原子力発電所の歴史は、イギリスから導入したガス冷却炉(GCR、Gas-Cooled Reactor)で幕を開けました。その後、ガス冷却炉に比べて、コンパクトで建設費が安く、改良や大型化も期待できる軽水炉へと移行しました。
現在、日本にある商業用の原子力発電所は、すべて軽水炉です。軽水炉は、世界の原子力発電の中心にもなっている原子炉で、沸騰水型原子炉(BWR、Boiling WaterReactor)と加圧水型原子炉(PWR、Pressurized Water Reactor)の二種類に分類されています。
そのほか、13か国1機関が参加する第4世代原子力システム国際フォーラムという国際的枠組みで、持続可能性や安全性・信頼性などの開発目標を定めて第4世代原子炉の開発が進められています。

沸騰水型原子炉(BWR)

核分裂によって発生した熱エネルギーを使って蒸気をつくり、蒸気の力で発電用のタービンを回して電気をつくります。

沸騰水型炉(BWR)原子力発電

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

  • 関連情報(詳細):電気事業連合会
    「沸騰水型炉(BWR)
    原子力発電のしくみ」

加圧水型原子炉(PWR)

原子炉の中でつくった高温高圧の水を蒸気発生器に送り、原子炉内の水とは別の水を沸騰させて蒸気をつくり、蒸気の力で発電用のタービンを回して電気をつくります。

加圧水型炉(PWR)原子力発電

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

  • 関連情報(詳細):電気事業連合会
    「加圧水型炉(PWR)
    原子力発電のしくみ」

2

BWRとPWRの違い

BWRとPWRは、原子炉格納容器で蒸気を発生させて発電用のタービンを回す点や非常時に原子炉を停止させて冷却させる過程、外部電源や交流電源の構成に大きな違いはありません。
BWRとPWRの大きな違いは原子炉にあります。BWRは原子炉内で蒸気を発生させ、その蒸気を直接タービンに送って発電しています。PWRは原子炉内で燃料棒に直接触れる水(一次冷却水)と、そこから熱をもらって蒸気になる水(二次冷却水)が分離されている点が特徴です。PWRは原子炉内でつくった高温高圧の一次冷却水を蒸気発生器に送り、放射性物質を含まない二次冷却水を蒸気にし、その蒸気をタービンに送って発電しています。

3

軽水炉の改良

日本は、軽水炉の安全性や信頼性、運転性などを国内の技術によって向上させ、改良型沸騰水型炉(ABWR、Advanced Boiling Water Reactor)を開発しました。 
ABWRは、BWRの原子炉圧力容器の外に設置してある原子炉再循環ポンプを圧力容器の中に設置し、ポンプ回りの配管をなくして単純化した点や、制御棒駆動機構として水圧駆動に電動駆動を加えた点が改良されています。
ABWRは、最新技術と運転経験を踏まえ、数々の優れた設計改良を施し、安全性・信頼性の向上、運転性・保守性の向上、放射線量・放射性廃棄物発生量の低減、経済性の向上などの特長を備えています。
2022年12月末現在、ABWRを採用している発電所は、柏崎刈羽原子力発電所6、7号機、浜岡原子力発電所5号機、志賀原子力発電所2号機の4基です。さらに、ABWR3基が建設中です。

4

革新軽水炉の開発

日本は、革新技術を採用した世界最高水準の安全性を実現する「革新軽水炉」の開発を推進しています。現在、コンセプトとして発表されているSRZ-1200は、岩盤に原子炉建屋を埋め込み耐震性を強化、電源を必要としないパッシブな安全設備を導入、炉心溶融が生じた際に炉心溶融物を捕捉・冷却し格納容器から漏れ出させないための専用設備「コアキャッチャー」を設置するなど、従来型軽水炉で得た知見をベースに、新しい安全メカニズムを組み込むことで安全性を大幅に高めた革新軽水炉です。
また、SRZ-1200は、周波数制御や負荷追従といった出力調整機能を強化することで、従来のベースロード電源の役割に加え、電力需要や他電源の出力変動にともなう系統不安定化に対応する調整電源としての運用性も格段に高めており、電力の安定供給に貢献します。

SRZ-1200プラントシステム全体構成

SRZ-1200プラントシステム全体構成

出典:革新軽水炉SRZ-1200パンフレット(三菱重工業(株))

  • 関連情報(詳細):
    電気事業連合会
    「軽水炉と高速増殖炉」

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