暮らしの中で
活躍する
放射線
放射線のさまざまな性質が、物質の内部の調査や素材の改質などの工業分野、野菜や果実の品種改良などの農業分野、病気の診断や治療などの医療分野、さらに科学分野などで活用され、私たちの暮らしに役立てられています。
工業
放射線が物質を通り抜ける性質(透過性)を利用して、バッグや靴などの出荷前の検査や空港での手荷物検査などが行われています。また、放射線を当てることによって、物質の耐久性や耐熱性、強度などを高めることができ、自動車のタイヤやテニスラケットのガット、水泳用のビート板などの製造で利用されています。ラップやペットボトルの滅菌にも放射線が使われています。

農業
放射線による種子や苗の品種改良で、病気に強い梨や倒れにくく収穫量の多い稲、色や形を変えた花などがつくられています。また、食品に放射線を当てて、発芽防止や殺虫、殺菌などをすることができます。世界では食肉や果実、スパイスなどを対象に実施されていますが、日本ではジャガイモの発芽防止のみが行われています。ゴーヤ(にがうり)につく害虫の駆除にも、放射線が役立てられました。

医療
健康診断で受ける胸や胃のレントゲン撮影や、病院でのCTスキャン検査では、放射線の透過性を利用して体内を調べています。特定の臓器や組織に集まりやすい放射性医薬品を使い、そこから出る放射線をとらえて画像化し、体内の様子を調べる検査も行われています。また、今日の日本での死因の第一位となっているがんの治療において、放射線の細胞致死作用を用いたがん治療が行われており、放射線治療は外科手術、化学療法(抗がん剤治療)と並んで重要な役割を担っています。さらに、注射器や手術用のメスなど医療器具の滅菌にも放射線が利用されています。

科学
遺跡から出土した木片や骨、貝殻などは、放射線を出す炭素(炭素14)が残っている割合を調べることで年代を測定することができます。また、CTスキャンを使って、解体せずに仏像の内部を調べることができ、金属製の五臓などが発見されています。さらに、宇宙線※「ミューオン」による巨大な構造物でも内部を透視できる技術で、ピラミッド内部にある未知の空間が発見されています。
※宇宙線…宇宙空間を飛び交う高エネルギーの放射線
