原子力総合パンフレット Web版

3章 放射線と放射線防護

内部被ばくについて

内部被ばくには、外部被ばくとは異なる特徴や注意点があります。
また、被ばくのリスクを低減させるため、食品中の放射性物質の摂取量が規制されています。

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内部被ばくの特徴

内部被ばくには、主に放射性物質が食べ物と一緒に取り込まれる「経口摂取」、呼吸によって取り込まれる「吸入摂取」、皮膚から吸収される「経皮吸収」、傷口から入る「創傷侵入」という四つの経路があります。
体に取り込まれた放射性物質は体内で放射線を出し、放射性物質の種類によっては特定の臓器に蓄積することがあります。例えば、カルシウムに似た性質のストロンチウムには、骨などカルシウムのあるところに蓄積する性質が、カリウムに似た性質のセシウムは、全身に分布する性質があります。また、ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成元素であるため、放射性ヨウ素も甲状腺に蓄積する性質があります。
内部被ばくで特に問題になるのは、①半減期が長く、アルファ線やベータ線を出すもの、②体に取り込まれやすく、排出されにくいもの、③特定の臓器に蓄積されやすいものです。例えば、プルトニウムは消化管では吸収されにくいため、経口摂取より吸入摂取の場合に問題となります。プルトニウムは肺から血流によって移動し、骨や肝臓に沈着し、アルファ線を出すため、肺がん、白血病、骨腫瘍、肝がんなどを引き起こす可能性があります。

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内部被ばくの計算

体内に摂取された放射性物質は、一定期間留まり、その間、人体は放射線を受け続けることになります。そのため、内部被ばくによる線量としては、1回に摂取した放射性物質によってそれ以後の生涯にどれだけ被ばくすることになるかを推定します。これを「預託実効線量」といいます。
その求め方は、基本は外部被ばくと同じですが、臓器や組織の吸収線量の求め方が異なります。例えば、体のどの部分に蓄積するかは放射性物質ごとに異なり、同じ放射性物質でも呼吸器経由か消化管経由かで体内での代謝や蓄積といった挙動に違いがあります。また、年齢によっても体内に留まる時間が異なります。そこで、こうした条件の違いごとに数理モデル計算を行い、どれくらいの放射性物質を摂取したら各臓器や組織がどれだけの線量を吸収するかを求めます。次に、外部被ばくの被ばく線量計算と同様に、放射線の種類や臓器による感受性の違いを考慮して、預託実効線量が算出されます。
実際には、摂取量に預託実効線量係数を乗じることで、内部被ばく線量を求めることができます。この係数は、放射性核種の種類や年齢ごとに細かく定められています。

内部被ばく線量の算出

内部被ばく線量の算出

実効線量への換算係数

実効線量への換算係数

μSv/Bq:マイクロシーベルト/ベクレル

※自由水型トリチウム

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

出典(3図表):環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」

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食品中の放射性物質の規制

福島第一原子力発電所の事故を受け、厚生労働省は、2011年3月17日に食品の暫定規制値を定めました。さらに、2012年4月1日からは、より一層、食品の安全と安心を確保するための新たな基準値(食品中の放射性物質に係る基準値)が導入されています。
当初、暫定規制値は、放射性セシウムによる被ばくが年間5ミリシーベルト以下になるように設定されていましたが、新基準値では年間1ミリシーベルト以下に引き下げました。これは、「国際食品規格委員会(コーデックス委員会)」で、科学的な知見に基づいて年間1ミリシーベルトを超えないよう指標を設定しており、日本の基準値にもこの国際的な指標が適用されているためです。
基準値は、とくに配慮が必要と考えられる食品で区分されています。すべての人が摂取し、代替がきかず、さらに摂取量が多い「飲料水」や、乳児だけが食べる「乳児用食品」、そして子供の摂取量が、とくに多い「牛乳」などです。それ以外の食品は、個人の食習慣の違いによる影響を最小限にするため、一括して「一般食品」としています。
日本の一般食品の基準値は、前提となる条件がとても厳しく設けられています。まず、食品の50%が汚染されていると仮定し、食品の摂取量が最も多い13~18歳の男性でも、年間線量が1ミリシーベルトを超えないように設定されました。さらに、飲料水や乳児用食品、牛乳は、それよりも厳しく100%が汚染されていると仮定した基準が設定されています。
自治体では、この基準値をもとに、食品の検査が行われています。基準値を超えた食品は、出荷制限などの措置がとられ、流通が止められます。検査状況は、厚生労働省や各自治体ホームページなどで公開されています。
食品中の放射性物質は、ゲルマニウム半導体検出器を用いて測定します。この検出器は、環境試料中の極微量の放射能測定が可能です。測定の手順は、まず、放射能を測定する食品などを測定しやすいよう前処理(解体、炭化、灰化、濃縮など)を行い、その後、試料を周囲の放射線を遮へいするため、鉛容器に納められた検出器の上に置いて測定します。検出器で感知された放射線のエネルギーなどの情報は、波高分析装置に送られ、放射性物質の種類と濃度が解析されます。

食品1キログラムあたりの放射性セシウムの基準値(単位:ベクレル/キログラム)

食品1キログラムあたりの放射性セシウムの基準値(単位:ベクレル/キログラム)

※基準値は、食品や飲料水から受ける線量を一定レベル以下にするためのものであり、安全と危険の境目ではありません。
また、各国で食品の摂取量や放射性物質を含む食品の割合の仮定値等の影響を考慮してあり、数値だけを比べることはできません。

出典:厚生労働省「食品中の放射性物質の新たな基準値について」などより作成

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

食物などに含まれる放射能の測定

食物などに含まれる放射能の測定

※放射能や線量率の測定結果が「不検出(ND)」となっていることがあります。これは放射性物質が全く存在しないことを意味するのではなく、検出限度未満の濃度であるということを示しています。

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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