1

外部被ばくと内部被ばく

放射線を受けることを「被ばく」といいます。そして、放射性物質などの放射線の発生源(線源)が、体の外にあり、体外から放射線を受けることを「外部被ばく」といいます。
一方、呼吸や飲食によって放射性物質を体内に取り込んだり、皮膚に付着した放射性物質が傷口から体に入ったりすることによって、体の中に取り込まれた線源から放射線を受けることを「内部被ばく」といいます。内部被ばくには、主に放射性物質が食べ物と一緒に取り込まれる「経口摂取」、呼吸によって取り込まれる「吸入摂取」、皮膚から吸収される「経皮吸収」、傷口から入る「創傷侵入」という四つの経路があります。

被ばくと汚染の違い

被ばくと汚染の違い

出典:原子力・エネルギー図面集

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

  • 関連情報(詳細):
    「被ばくの種類」

2

外部・内部被ばくの低減

外部被ばくの線量を少なくするためには、三つの方法があります。
一つ目は放射線源から「離れる」という方法です。二つ目は「遮へい」です。放射線をさえぎる建物に避難することです。三つ目は放射線源の近くにいる「時間を短くする」ことです。
内部被ばく線量を減らすためには、空気や飲み物、食べ物とともに取り込む放射性物質を減らすことが重要となります。また、放射性物質が体内に入った場合は、体外への排出を増やしたり早めたりする処置をとります。
原子力施設の事故などで放射性物質が放出された場合、建物の中に退避する屋内退避は、外部被ばくと内部被ばくを低減させるための有効な手段とされています。

3

放射線の種類による影響の違い

外部被ばくでは、アルファ線は空気中で飛ぶ距離が数cmしかないため体表に到達することも少なく、また、到達しても皮膚の角質層で止まってしまいます。そのため、人体に影響が現れることはまずありません。ベータ線は、エネルギーが高いものは皮膚を透過でき、線量が相当高ければ、やけどのような症状を引き起こしますが、体の奥深くまで届くことはありません。ガンマ線は体の深部まで到達するため、注意が必要です。
また内部被ばくでは、アルファ線、ベータ線は飛ぶ距離が短いため、影響は放射性物質が存在する組織内に限定されますが、特にアルファ線は生物への影響が大きいため気を付ける必要があります。ガンマ線は飛ぶ距離が長いため、広範囲にわたって影響を及ぼす可能性があります。

透過力と人体での影響範囲

透過力と人体での影響範囲

出典:環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料

4

生物学的半減期

放射性同位元素(RI)の放射能は時間とともに減少します。RIの放射能が半分になるのにかかる時間を「物理学的半減期」といいます。また、呼吸や飲食を通じて私たちの体内に取り込まれたRIは、体の代謝や排泄によって体外に排出されますが、体に取り込んだ量が排出によって半分に減るまでにかかる時間を「生物学的半減期」といいます。生物学的半減期は、RIの化学的な性質や、体内に取り込んだ人の年齢など、生理的な要因によって異なります。
例えば、セシウム137の生物学的半減期は、30歳の成人で70日程度、9歳までの小児で40日程度、1歳までの乳児では10日程度とされています。
そして、体内にあるRIが、物理学的半減期や生物学的半減期などにより、半分に減るまでにかかる時間を「実効半減期」といいます。実効半減期は、物理学的半減期や生物学的半減期より短くなります。生物学的半減期は、RIがどのような化学的状態で存在するかによって異なります。トリチウムは、水分子としての生物学的半減期は10日程度、有機分子に取り込まれたものでは短いものが40日程度、長いものが1年程度とされています。

5

放射性物質の臓器への蓄積

体に取り込まれた放射性物質は、種類によって特定の臓器に蓄積することがあります。例えば、カルシウムに似た性質のストロンチウム、ラジウムは、骨などカルシウムの多いところに蓄積します。また、ヨウ素は甲状腺ホルモンの構成元素であるため、放射性ヨウ素も甲状腺に蓄積する性質があります。カリウムに似た性質のセシウムは全身に分布しますが、特に、筋肉に多く分布するとされています。内部被ばくで特に問題になるのは、透過力が低いアルファ線やベータ線を出すRIです。また、体内に取り込まれやすく、排出されにくいものや、特定の臓器に蓄積されやすいものです。例えば、プルトニウムは消化管では吸収されにくいため、経口摂取より吸入摂取の場合に問題となります。プルトニウムは肺から血流によって移動し、骨や肝臓に沈着し、アルファ線を出すため、肺がん、白血病、骨腫瘍、肝がんなどを引き起こす可能性があります。

主な放射性物質の半減期と影響

主な放射性物質の半減期と影響

*1 : トリチウム水
*2 : ICRP Publication 78
*3 : JAEA技術解説, 2011年11月
*4 : セシウム137と同じと仮定
*5 : ICRP Publication 48

6

預託実効線量

放射性物質は、体内に摂取された後、一定期間体内にとどまります。その間、人体は放射線を受け続けることになります。そのため内部被ばくによる線量としては、1回に摂取した放射性物質の量から、将来にわたって受ける放射線の総量を考えます。これを預託線量(単位はシーベルト)といいます。
体内に取り込んだ放射性物質は、時間とともに減少します。その原因の一つは、放射性物質の壊変によるもので、もう一つは、体外への排出によるものです。また、放射性物質にはほぼ全身に均等に分布するもの、特定の臓器や組織に蓄積するものがあります。体内での分布や、体外への排出速度は、元素の種類やその化学形態、年齢によって異なります。預託線量はこのような違いを考慮して、ある放射性物質により人体が受ける放射線量の一生分を積算した量を、その年に受けたものとみなします。特に実効線量に着目して一生分を積算した線量を「預託実効線量」とよびます。

預託実効線量

預託実効線量

出典:環境省 放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

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