原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

原子力を取り巻くさまざまな課題

原子力発電所の再稼働や使用済燃料対策、核燃料サイクル、最終処分、廃炉などの原子力事業を
取り巻くさまざまな課題に対して、取り組みを進めていくことが必要とされています。

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原子力の安定的利用

輸入依存度が高いなど、脆弱なエネルギー供給構造にある日本は、さまざまなエネルギー資源を有効活用していく必要があります。エネルギーの安定供給のために、原子力発電は有効な方法の一つです。
原子力規制委員会では、福島第一原子力発電所事故を教訓とした新規制基準に基づき、事業者から申請された原子力施設の適合性について審査を進めていますが、2019年11月末現在、審査を通過し関係者の了解を得て再稼働した原子力発電所は9基にとどまっています。

「長期エネルギー需給見通し」において、2030年度の電源構成に占める原子力の割合が20~22%程度と示されましたが、この目標を達成するためには、既設炉の安定的な稼働のみならず、一定数の既設炉の運転期間延長が必要となります。また、電力自由化によって規制緩和が進むことで、今後ますます競争が激しくなることから、そのような環境の中でも必要な投資を確保し、エネルギーミックスを達成していくことが重要です。

今後、低廉かつ安定的な電力供給や地球温暖化といった長期的な課題に対応していくことが求められる中で、国民からの社会的な信頼を獲得し、安全確保を大前提に、原子力の利用を安定的に進めていくことが重要です。そのためには、原子力発電所の再稼働や建て替え(リプレース)、新規建設、使用済燃料対策、核燃料サイクル、最終処分、廃炉などの原子力事業を取り巻くさまざまな課題に対して、総合的かつ責任ある取り組みを進めていくことが必要とされています。

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使用済燃料の中間貯蔵

原子力発電所で発電に使用した使用済燃料は、再処理するために再処理工場に搬出されますが、搬出するまでの間は、各発電所の敷地内で安全に管理され、貯蔵されています。2019年9月末現在、21,400トンの管理容量のところ、16,000トンの使用済燃料が、各原子力発電所で貯蔵されています。現在、貯蔵の容量に余裕のない原子力発電所もあるため、使用済燃料を再処理するまでの間、安全に貯蔵する中間貯蔵施設が必要となります。
そこで、2015年10月、国は、事業者に対して「使用済燃料対策に関するアクションプラン」において、発電所の敷地内外を問わず、新たな地点の可能性を幅広く検討しながら、中間貯蔵施設や乾式貯蔵施設の建設や活用について事業者間で連携しながら促進するように要請しました。
これを受け、電力9社と日本原子力発電(株)で構成する「使用済燃料対策推進連絡協議会」を電気事業連合会に設置し、「使用済燃料対策推進計画」を策定しました。使用済燃料の貯蔵能力拡大を目指し、事業者全体で共同での研究開発や理解活動の強化、中間貯蔵施設などの建設・活用の促進に向けた検討を行っています。

各原子力発電所の使用済燃料の貯蔵量

各原子力発電所の使用済燃料の貯蔵量
  • ※1 管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心分+1取替分を差し引いた容量」
    なお、運転を終了したプラントについては、貯蔵容量と同じとしている
  • ※2 使用済燃料貯蔵量は2019年9月末時点
  • ※3 福島第一については、廃炉作業中であり、第一回推進協議会時点(2015年9月末値)を参考値とし、その後の廃炉作業にともなう乾式キャスク仮保管設備拡張は除外している
  • ※4 浜岡1、2号炉・伊方1号炉は廃止措置中であり、管理容量から除外している

出典:電気事業連合会 資料より作成

関連情報(詳細):日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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核燃料サイクルの意義

石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源を多く輸入している日本は、原子力発電で使われるウラン資源も海外から輸入しています。
ただし、ウランは原子力発電所で燃料として使い終わっても、核分裂していないウランや新たに生まれたプルトニウムなどを再処理することで、再び原子力発電の燃料として使うことができます。
このようにウランとプルトニウムは、自国で再びエネルギー資源として有効活用できることから、「準国産エネルギー資源」と位置づけられています。
日本のエネルギー自給率は、原子力を国産とした場合でも9.6%(2017年)しかありませんが、ウランは、一度輸入すると長期間使用することができます。原子力発電を国産として計算をすると、エネルギー自給率を高めることができます。
核燃料サイクルを行うことは、資源小国である日本にとって、エネルギー資源を有効利用でき、日本の将来のエネルギー安全保障の観点で重要です。

原子力発電所の使用済燃料を再処理することによって回収されるプルトニウムは、現在運転されている原子力発電所(軽水炉)で利用されています。これをプルサーマルといいます。
日本の原子力利用は、平和の目的に限るとされ、核不拡散の観点から利用目的のないプルトニウムは持たないことを原則としています。そのため、再処理で回収されるプルトニウムをプルサーマルで利用していくことは非常に大きな意義があります。さらに、ウラン238からプルトニウムへ効率的に転換する高速増殖炉を用いれば、その利用効率が、数十倍以上に高まると試算されています。
2018年12月末時点で日本が国内外で管理しているプルトニウムは約46トンで、関西電力(株)高浜発電所3、4号機、九州電力(株)玄海原子力発電所3号機でのMOX燃料の使用などによって前年より約1.5トン減少しています。大半の約37トンはイギリスとフランスにあり、国内では約9トンを保有しています。
また、日本の政策では、使用済燃料の再処理により発生した高レベル放射性廃棄物を処分する計画ですが、海外では使用済燃料を再処理せずに、そのまま直接処分する国もあります。
再処理をした場合には、直接処分と比べて、高レベル放射性廃棄物の体積を約4分の1に減らすことができ、放射能の有害度がウラン燃料の原料となる天然ウラン並になるまでの期間を約12分の1にすることができます。
さらに、高速炉サイクルなどが実用化すれば、直接処分と比べ、高レベル放射性廃棄物の体積を約7分の1に減らすことができ、放射能の有害度が、天然ウラン程度になるまでの期間を約330分の1に短縮することができます。

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高速炉の開発

日本の高速炉開発は、実験炉、原型炉、実証炉、商用炉と段階的に進める計画で、実験炉「常陽」(茨城県大洗町)と原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA、Japan Atomic Energy Agency)が担っています。「もんじゅ」では、1995年にナトリウム漏えい事故を起こし、その後も炉内中継装置の落下などのトラブルが発生しましたが、これまでの実験炉と原型炉の設計・建設・運転保守を通じて、炉心設計手法やナトリウム機器の取り扱い技術、安全性確保策など、高速炉に関する技術的知見を蓄積してきました。
2016年に設置された「高速炉開発会議」において今後の高速炉開発の方針が検討され、同年12月の原子力関係閣僚会議で次のような方針が決定されました。
高速増殖原型炉「もんじゅ」は、原子炉としての運転再開はせず、廃止措置へ移行しますが、「もんじゅ」を活用した高速炉研究は継続され、周辺地域を高速炉の研究開発の中核的拠点の一つとして位置づけることになりました。
今後の高速炉開発については、四つの原則「国内に蓄積した技術や知見、人材の徹底活用」、「国際ネットワークを利用した最先端の知見の吸収」、「費用対効果の高い効率的な開発の推進」、「関係機関が密に連携し、責任関係を一元化した体制の構築」に従って進められます。その原則に沿った開発方針を具体化するため、今後10年程度の開発作業を特定する「戦略ロードマップ」の策定作業が進められることになります。
今後、海外の研究機関と連携しながら、「常陽」や「もんじゅ」をはじめ、国内の研究施設を活用することにより、高速炉特有の技術的な課題を解決する研究が進められることになります。また、高速炉開発はプルトニウムを利用するため、日本はプルトニウムの分離と利用のバランスの確保に関する情報を国際社会に対して発信していくこととしています。

高レベル放射性廃棄物の減容・有害度の低減

高レベル放射性廃棄物の減容・有害度の低減
  • ※1 数字は原子力機構概算例 直接処分時のキャニスタを1としたときの相対値を示す
  • ※2 潜在的有害度:人が人体に放射性物質を取り込んだと仮定した潜在的な有害度
  • ※3 出典:原子力政策大綱 上欄は1GWyを発電するために必要な天然ウラン量の潜在的有害度と等しくなる期間を示し、下欄は直接処分時を1としたときの相対値を示す
  • ※4 原子力委員会試算(2011年11月)(割引率3%のケース)軽水炉再処理については、使用済燃料を貯蔵しつつ再処理していく現状を考慮したモデルと、次々と再処理していくモデルで計算

出典:経済産業省 資源エネルギー庁 資料などより作成

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