原子力総合パンフレット Web版

日本のエネルギー事情と原子力政策

地層処分の実現に向けて(科学的特性マップ)

地層処分を行う場所を選ぶために考慮する必要がある科学的特性や、
そうした特性の日本全国における分布の状況などを俯瞰できるよう、科学的特性マップが提示されました。

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科学的特性マップの提示

地層処分を実現していくためには、そのしくみや日本の地下環境などについて多くの人に関心をもってもらい、理解を深めてもらうことが重要です。また、「火山や活断層が多い日本に、地層処分の適地はあるのだろうか」という声も聞かれます。こうしたことも踏まえ、国は2017年7月28日に、「科学的特性マップ」を提示しました(下図)。
これは、火山や活断層、地下深部の地盤の強度、地温の状況など、地層処分に関する地域の科学的特性について、既存の全国データをもとに一定の要件・基準にしたがって客観的に全国地図を4色に色分けしたものです。 オレンジとシルバーは、「好ましくない特性があると推定される地域」です。オレンジは、火山の近くや活断層の影響が大きいところなど、地下深部の安定性を欠く地域。シルバーは、油田やガス田などがあり、将来、掘削される可能性がある地域です。一方、グリーンは「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」で、そのなかでも「海岸から20km以内にあって海上輸送ができ、輸送面でも好ましい地域」は濃いグリーンで示されています。

科学的特性マップ

科学的特性マップ

出典:経済産業省 資源エネルギー庁資料より作成

専門情報:資源エネルギー庁「科学的特性マップ公表用サイト」

凡例

  • 好ましくない特性があると推定される地域
    (地下深部の長期安定性等の観点)
  • 好ましくない特性があると推定される地域
    (将来の掘削可能性の観点)
  • 好ましい特性が確認できる可能性が
    相対的に高い地域
  • 輸送面でも好ましい地域

好ましくない範囲の要件・基準

要件 基準
火山・火成活動 火山の周囲
(マグマが処分場を貫くことを防止)
火山の中心から半径15km以内など
断層活動 活断層の影響が大きいところ
(断層のずれによる 処分場の破壊などを防止)
主な活断層(断層長10km以上)の両側一定距離(断層長×0.01)以内
隆起・侵食 隆起と海水面の低下により将来大きな侵食量が
想定されるところ

(処分場が地表に接近することを防止)
10万年間に300mを超える隆起の可能性がある、過去の隆起量が大きな沿岸部
地熱活動 地熱の大きいところ
(人工バリアの機能低下を防止)
15℃/100mより大きな地温勾配
火山性熱水・深部流体 高い酸性の地下水などがあるところ
(人工バリアの機能低下を防止)
pH4.8未満など
軟弱な地盤 処分場の地層が軟弱なところ
(建設・操業時の地下施設の崩落事故を防止)
約78万年前以降の地層が300m以深に分布
火砕流などの影響 火砕流などが及びうるところ
(建設・操業時の地上施設の破壊を防止)
約1万年前以降の火砕流などが分布
鉱物資源 鉱物資源が分布するところ
(資源の採掘にともなう人間侵入を防止)
石炭・石油・天然ガス・金属鉱物が賦存

好ましい範囲の要件・基準

要件 基準
輸送 海岸からの陸上輸送が容易な場所 海岸からの距離が20km以内目安
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考慮している主な特性

科学的特性マップでは、九つの特性を考慮していますが、その主なものとして、火山、活断層、鉱物資源、輸送が挙げられます。

【火山】

火山の近くに処分場を建設すると、上昇してきたマグマと一緒に高レベル放射性廃棄物が地上に出てきたり、人工バリアや天然バリアの機能が低下したりする可能性があります。このため、火山の中心から15km以内などの領域を好ましくない範囲としています。

【活断層】

大きな活断層は、ずれたときの衝撃が大きく、その衝撃が処分施設を直撃すると人工バリアなどが破壊され、放射性物質の放射能レベルが十分に下がる前に岩盤に漏れ出す可能性があります。このため、10km以上の長さの断層について、断層の長さの100分の1(断層の両側合計)の領域を好ましくない範囲としています。

【鉱物資源】

地下に鉱物資源があると、遠い将来、人間による処分施設の管理が終わって、そこに処分場があることが忘れ去られてしまったときに、資源を求めた人間がその場所を掘削して、処分場が破壊されてしまう可能性があります。このため、石炭や石油、天然ガス、金属鉱物が存在すると考えられる領域を好ましくない範囲としています。

【輸送】

高レベル放射性廃棄物は、青森県六ヶ所村にある再処理工場から処分場に輸送されることになりますが、テロの危険性などを踏まえると、長距離の輸送は海上輸送を前提としたうえで、処分場近くの港湾からの陸上輸送の距離は短いほうが好ましいといえます。このため、海岸から20kmを目安とする領域を好ましい範囲としています。

科学的特性マップにおける地域特性の区分

科学的特性マップにおける地域特性の区分

出典:経済産業省 資源エネルギー庁資料より作成

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科学的特性マップの位置づけ

科学的特性マップを提示することで、全国各地の科学的特性が分かりやすく示されることになりますが、これはあくまでも科学的な情報を客観的に提供するものです。
処分場所を選定するまでには、マップに含まれていない要素も含めて、およそ20年をかけて、文献調査やボーリングによる概要調査、地下施設での精密調査が実施されます。例えば今回のマップでは、これまでに確認されている一定規模以上の約600の活断層を反映していますが、現時点では確認されていない活断層が存在する可能性やその影響なども詳しく調査・評価されることになります。

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