原子力総合パンフレット Web版

3章 放射線と放射線防護

原子力施設での放射線や放射性物質の管理

原子力施設内で発生した放射性物質の外部への放出量と原子力施設内で作業する
放射線業務従事者が受ける放射線の量は、厳しく管理する必要があります。

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原子力施設のまわりの放射線管理

原子力施設内で発生した放射性物質が外部に放出されると、この放射性物質から出る放射線により、周辺環境へ影響を与えることになります。このため、放射性物質の放出について厳しく管理する必要があります。
原子力発電所の運転中には、微量の放射性物質が周辺の環境に放出されます。この放射性物質による実効線量については、年間0.05ミリシーベルトを目標値として設定しています。こうして一般の人の線量限度である年間1ミリシーベルトに比べ十分低い値に放出管理されています。

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放射線や放射性物質を監視するモニタリング

モニタリングとは、放射線の量や放射性物質の濃度を連続的に、または、一定の頻度で測定し、監視することをいいます。事業者などは、原子力施設周辺にモニタリングポストやモニタリングステーションを設置し、大気中の放射線量を24時間測定・監視し、ホームページなどで公表しています。
ガンマ線の測定を目的とするときは、「シンチレーション式検出器」や「電離箱式検出器」が用いられます。携帯用の放射線測定器には、シンチレーション式や電離箱式のサーベイメータのほかにも、中性子線を測定するサーベイメータがあり、測定する放射線の種類により異なった測定器を用いています。(放射能・放射線の単位と測定 放射線の測定 参照
また、周辺の雨水や地下水、海水、海底土、土壌、農作物、水産物、畜産物などについても、放出された放射性物質が周辺に影響を与えていないかどうかを確認しています。

原子力施設周辺の環境放射線モニタリング

原子力施設周辺の環境放射線モニタリング

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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原子力施設で働く人たちの放射線管理

原子力施設で作業する放射線業務従事者が、日常の点検や定期検査などの作業で受ける放射線の量を低く抑えることが大変重要です。このため、放射線業務従事者の線量を法令で定められた限度(5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト)以下にするよう厳しい放射線管理が行われています。
原子力施設では、放射線管理を行うため、「管理区域」を定めています。これは、原子炉のある建物や放射性廃棄物を処理・貯蔵する建物の中で、放射線業務従事者が放射線を受けたり、放射性物質で衣服などが汚染される可能性のある場所です。
管理区域内で働くためには、すべての放射線業務従事者が法令で定められた健康診断、受けた放射線の量の確認、放射線管理についての教育などを受けなければなりません。
作業にあたっては、警報装置付き個人線量計、ガラスバッジなどの測定器により、常に放射線業務従事者が受けた放射線の量を測定しています。また、内部被ばくについてもホールボディカウンターを用いて測定しています。

一方で、作業内容の改善や補修などの作業の効率化を図るための自動点検装置(ロボット)などによる自動化、遠隔化技術の開発を進めることにより、放射線業務従事者が受ける放射線量を低く抑える努力がなされています。
また、管理区域内の放射性物質を外部へ持ち出さないようにするために、区域内においては必要に応じ、専用の衣服や靴などに替えたり、退出の際に退出モニターやサーベイメータなどの測定器で放射性物質による汚染の有無を確認しています。そして、手などに放射性物質が付着していた場合は、よく手洗いをするなど、徹底した管理が実施されています。
いくつもの原子力施設で働く放射線業務従事者の放射線管理を一元化するため、放射線業務従事者の受けた放射線の量は、放射線登録管理制度により、(公財)放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターへ登録されます。
さらに、放射線管理に万全を期すため、放射線業務従事者は、同センターが発行する総線量が記載された放射線管理手帳を所持することになっています。
このような放射線管理は、放射性物質を取り扱う研究施設や医療機関、工場などでも適用されています。

放射線業務従事者の放射線管理

放射線業務従事者の放射線管理

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

原子力発電所の区域区分

原子力発電所の区域区分

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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原子力施設で働く人たちの被ばくリスク調査

日本の原子力施設で働いたり、働いた経験のある放射線業務従事者を対象に、低線量の放射線のがんによる死亡に対して、どのような影響を及ぼすのかについて調査が行われました。この調査は、20万人以上について、1990年度からほぼ5年ごとに5回実施されています。
これまでの調査結果では、肝がん、肺がん、食道がんについて、日本人男性の平均の死亡率より有意に死亡率が高くなりました。しかし、これらのがんは、喫煙や飲酒などとの因果関係が強いことが分かっています。
そこで、喫煙に関連するがんを除いたがん(白血病を含む)について調べてみると、死亡率には、有意な差は現れませんでした。これまでに実施された結果を総合すると、低線量の放射線が、がんによる死亡率に影響を及ぼしている証拠は現れていません。

専門情報:放射線影響協会「調査報告書・調査パンフレット」

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