原子力総合パンフレット Web版

放射線と放射線防護

原子力施設での放射線や放射性物質の管理

原子力施設内で発生した放射性物質の外部への放出量と原子力施設内で作業する
放射線業務従事者が受ける放射線の量は、厳しく管理する必要があります。

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原子力施設のまわりの放射線管理

原子力施設内で発生した放射性物質が外部に放出されると、この放射性物質から出る放射線により、周辺環境へ影響を与えることになります。このため、放射性物質の放出について厳しく管理する必要があります。
原子力発電所の運転中には、微量の放射性物質が周辺の環境に放出されます。放出された放射性物質によって一般の人が受ける放射線の線量限度である年間1ミリシーベルトに比べ、十分低い年間0.05ミリシーベルトの目標値が設定され、放出が管理されています。

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放射線や放射性物質を監視するモニタリング

モニタリングとは、放射線の量や放射性物質の濃度を連続的に、または、一定の頻度で測定し、監視することをいいます。事業者などは、原子力施設周辺にモニタリングポストやモニタリングステーションを設置し、大気中の放射線量を24時間測定・監視し、ホームページなどで公表しています。
ガンマ線の測定を目的とするときは、「シンチレーション式検出器」や「電離箱式検出器」が用いられます。携帯用の放射線測定器には、シンチレーション式や電離箱式のサーベイメータのほかにも、中性子線を測定するサーベイメータがあり、測定する放射線の種類により異なった測定器を用いています。
また、周辺の雨水や地下水、海水、海底土、土壌、農作物、水産物、畜産物などについても、放出された放射性物質が周辺に影響を与えていないかどうかを確認しています。

原子力施設周辺の環境放射線モニタリング

原子力施設周辺の環境放射線モニタリング

出典:日本原子力文化財団「原子力・エネルギー図面集」

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原子力施設で働く人たちの放射線管理

原子力施設で作業する放射線業務従事者が、日常の点検や定期検査などの作業で受ける放射線の量を低く抑えることが大変重要です。このため、放射線業務従事者の線量を法令で定められた限度(5年間で100ミリシーベルト、1年間で50ミリシーベルト)以下にするよう厳しい放射線管理が行われています。
原子力施設では、放射線管理を行うため、「管理区域」を定めています。これは、原子炉のある建物や放射性廃棄物を処理・貯蔵する建物の中で、放射線業務従事者が放射線を受けたり、放射性物質で衣服などが汚染される可能性のある場所です。
管理区域内で働くためには、すべての放射線業務従事者が法令で定められた健康診断、受けた放射線の量の確認、放射線管理についての教育などを受けなければなりません。
作業にあたっては、警報装置付き個人線量計、ガラスバッジなどの測定器により、常に放射線業務従事者が受けた放射線の量を測定しています。また、内部被ばくについてもホールボディカウンターを用いて測定しています。

一方で、作業内容の改善や補修などの作業の効率化を図るための自動点検装置(ロボット)などによる自動化、遠隔化技術の開発を進めることにより、放射線業務従事者が受ける放射線量を低く抑える努力がなされています。
また、管理区域内の放射性物質を外部へ持ち出さないようにするために、区域内においては必要に応じ、専用の衣服や靴などに替えたり、退出の際に退出モニターやサーベイメータなどの測定器で放射性物質による汚染の有無を確認しています。そして、手などに放射性物質が付着していた場合は、よく手洗いをするなど、徹底した管理が実施されています。
いくつもの原子力施設で働く放射線業務従事者の放射線管理を一元化するため、放射線業務従事者の受けた放射線の量は、放射線登録管理制度により、(公財)放射線影響協会の放射線従事者中央登録センターへ登録されます。
さらに、放射線管理に万全を期すため、放射線業務従事者は、同センターが発行する総線量が記載された放射線管理手帳を所持することになっています。
このような放射線管理は、放射性物質を取り扱う研究施設や医療機関、工場などでも適用されています。

ワンポイント情報

大洗研究開発センター作業員被ばく事故

2017年6月6日、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)・大洗研究開発センターの燃料研究棟分析室(放射線管理区域)において、核燃料物質の貯蔵容器の点検中に容器内部の樹脂製の袋が破裂して、放射性物質が飛散し、作業員5名が被ばくしました。核燃料物質の粉末を固定するために使われていたエポキシ樹脂が、プルトニウムから出るアルファ線によって分解され、ガスが発生し、袋の内圧が上がり破裂したと推定されています。
作業員の外部被ばくによる実効線量と体表面汚染による皮膚の被ばく線量は、全員が記録レベル(0.1ミリシーベルト)未満でした。内部被ばくについては、放射線医学総合研究所(放医研)が、肺モニタより高い精度で検出ができるバイオアッセイ検査によって、尿や便などの排泄物に含まれる放射性物質の分析を行っています。7月10日に公表された線量評価では、100ミリシーベルト以上200ミリシーベルト未満が1名、10ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満が2名、10ミリシーベルト未満が2名となっています。これは、今後50年間にわたる内部被ばくを考慮して算定された数値です。作業員は、その後もバイオアッセイ検査を継続して受けており、全員の体調に特段の変化はありません。

作業員は全員、反面マスクを着用して作業をしていましたが、袋の破裂時の風圧や会話、発汗などによりマスクの密着性が低下したため、顔面などに付着した放射性物質がマスクの接顔部からマスク内に入り、これを吸引摂取したことにより内部被ばくをした可能性が高いとされています。
JAEAでは、今回の事故を受け、核燃料物質の貯蔵・管理に関する基準の改善、情報の整理・明確化、長期間の記録の管理方法の改善、教育の徹底、作業計画の作成方法の見直し、異常の兆候を確認した場合の作業停止の明確化などに取り組むとしています。 なお、今回の事故は管理区域外への放射性物質の放出がなかったことや、最大の作業員の被ばくが法定年間線量限度(50ミリシーベルト/年)を超えていないことなどから、INES(国際原子力・放射線事象評価尺度)はレベル2の異常事象と暫定評価されています。

専門情報 : (国研)日本原子力研究開発機構「発表・お知らせ」

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