原子力総合パンフレット Web版

1章 日本のエネルギー事情と原子力政策

原子力の安定的な利用に向けて
〜再稼働、核燃料サイクル、使用済燃料の中間貯蔵〜

1

原子力を取り巻くさまざまな課題

輸入依存度が高いなど、脆弱なエネルギー供給構造にある日本は、さまざまなエネルギー資源を有効活用していく必要があります。エネルギーの安定供給のために、原子力発電は有効な方法の一つです。
2030年度に向けた電力の需給見通しで示された原子力の割合(20~22%程度)を達成するためには、設備利用率を70~90%と想定した場合、約2,370~3,350万kWの原子力発電設備容量が必要となります。2021年10月時点で建設されている原子力発電所の設備容量は、約3,300万kWですが、営業運転を再開したものは10基で、約1,000万kWにとどまっています。
また、福島第一原子力発電所の事故を受けて2012年に「運転期間延長認可制度」が導入され、原子炉を運転することができる期間が40年と定められました。その満了までに原子力規制委員会の認可を受けた場合、1回に限り最大20年延長の申請を行うことも認められました。
仮に、すべての既設炉が運転延長した場合、約3,300万kWの設備容量が維持されることとなりますが、2021年10月時点で運転期間延長の認可を受けた原子力発電所以外のすべての既設炉が運転期間を延長せず、40年で閉鎖した場合、2030年度の原子力発電の設備容量は約2,400万kWとなり、2030年度に向けた電力の需給見通しで示された原子力の割合を達成することができません。
原子力を安定的にかつ持続的に利用していくためには、原子力発電所の再稼働や建て替え(リプレース)、新規建設、使用済燃料対策、核燃料サイクル、放射性廃棄物の最終処分、廃炉などの原子力事業を取り巻くさまざまな課題に対して、総合的かつ責任ある取り組みを進めていくことが必要とされています。

既設炉設備容量の推移見通し(2021年10月)

既設炉設備容量の推移見通し(2021年10月)

出典:日本エネルギー経済研究所

2

核燃料サイクルの意義

石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源を多く輸入している日本は、原子力発電で使われるウラン資源も海外から輸入しています。
ただし、ウランは原子力発電所で燃料として使い終えても、核分裂していないウランや新たに生まれたプルトニウムなどを再処理することで、再び原子力発電の燃料として使うことができます。
このようにウランとプルトニウムは、自国で再びエネルギー資源として有効活用できることから、「準国産エネルギー資源」と位置づけられています。
日本のエネルギー自給率は、原子力を国産とした場合でも11.2%(2020年)しかありませんが、ウランは、一度輸入すると長期間使用することができます。以上の理由から、原子力発電は、準国産エネルギーであり、エネルギー自給率を高めることに貢献します。
核燃料サイクルを行うことは、資源小国である日本にとって、エネルギー資源を有効利用でき、日本の将来のエネルギー安全保障の観点で重要です。
原子力発電所の使用済燃料を再処理することによって回収されるプルトニウムは、現在運転されている原子力発電所(軽水炉)で利用されています。これをプルサーマルといいます。
日本の原子力利用は、平和の目的に限るとされ、核不拡散の観点から利用目的のないプルトニウムは持たないことを原則としています。そのため、再処理で回収されるプルトニウムをプルサーマルで利用していくことは非常に大きな意義があります。さらに、ウラン238からプルトニウムへ効率的に転換する高速炉を用いれば、その利用効率が数十倍以上に高まると試算されています。
また、日本の政策では、使用済燃料の再処理により発生した高レベル放射性廃棄物を処分する計画ですが、海外では使用済燃料を再処理せずに、そのまま直接処分する国もあります。再処理をした場合には、直接処分と比べて、高レベル放射性廃棄物の体積を約4分の1に減らすことができ、放射能の有害度がウラン燃料の原料となる天然ウラン並になるまでの期間を約12分の1にすることができます。
さらに、高速炉サイクルなどが実用化すれば、直接処分と比べ、高レベル放射性廃棄物の体積を約7分の1に減らすことができ、放射能の有害度が、天然ウラン程度になるまでの期間を約330分の1に短縮することができます。

高レベル放射性廃棄物の減容・有害度の低減

高レベル放射性廃棄物の減容・有害度の低減
  • ※1 数字は原子力機構概算例 直接処分時のキャニスタを1としたときの相対値を示す
  • ※2 潜在的有害度:人が人体に放射性物質を取り込んだと仮定した潜在的な有害度
  • ※3 出典:原子力政策大綱 上欄は1GWyを発電するために必要な天然ウラン量の潜在的有害度と等しくなる期間を示し、下欄は直接処分時を1としたときの相対値を示す
  • ※4 原子力委員会試算(2011年11月)(割引率3%のケース)軽水炉再処理については、使用済燃料を貯蔵しつつ再処理していく現状を考慮したモデルと、次々と再処理していくモデルで計算

出典:資源エネルギー庁資料などより作成

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使用済燃料の中間貯蔵

核燃料サイクルを進めていくうえで課題となっていることの一つが、使用済燃料の貯蔵能力を拡大することです。2021年9月現在、国内で貯蔵されている使用済燃料は16,270トンで、すでに国内の貯蔵容量約21,350トンの75%以上を占めています。
2015年には、政府の最終処分関係閣僚会議で「使用済燃料対策に関するアクションプラン」が決定されました。官民が協力して、使用済燃料の貯蔵能力を拡大するための取り組みを強化することが掲げられ、「政府と事業者による協議会の設置」や「事業者に対する『使用済燃料対策推進計画』の策定要請」などが決められました。
これを受け、電力9社と日本原子力発電(株)で構成する「使用済燃料対策推進連絡協議会」を電気事業連合会に設置し、「使用済燃料対策推進計画」を策定しました。使用済燃料の貯蔵能力拡大を目指し、事業者全体で共同での研究開発や理解活動の強化、中間貯蔵施設などの建設・活用の促進に向けた検討を行っています。
現在、各原子力発電所などでは、使用済燃料プールの貯蔵能力の拡大や乾式貯蔵施設の設置などの対策が予定されています。また、青森県のむつ市においては、使用済燃料の中間貯蔵施設の建設が進められています。

使用済燃料の貯蔵能力拡大に向けた取り組み

使用済燃料の貯蔵能力拡大に向けた取り組み
  • ※1 管理容量は、原則として「貯蔵容量から1炉心分+1取替分を差し引いた容量」なお、運転を終了したプラントについては、貯蔵容量と同じとしている
  • ※2 使用済燃料貯蔵量は2021年9月末時点
  • ※3 浜岡1、2号炉・伊方1号炉は廃止措置中であり、管理容量から除外している
  • ※4 使用済燃料貯蔵施設1棟目に3,000tUの規模の建屋を建設し、その後2,000tUの規模の貯蔵建屋を建設予定

出典:電気事業連合会HPより作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

貯蔵対策の具体例

リラッキング

使用済燃料を収納するラック(収納棚)をステンレス鋼製から中性子吸収材であるホウ素を添加したステンレス鋼製に変更し、使用済燃料プールの大きさを変えることなく、ラックの間隔を狭めることで、使用済燃料の貯蔵能力を増やします。

乾式貯蔵施設の設置

原子力発電所の敷地内外に、使用済燃料を収納するキャスクを保管するための建屋を設置し、使用済燃料の貯蔵能力の拡大を図ります。

  • 関連情報(詳細):「使用済燃料の
    貯蔵能力拡大とその具体例」

    電気事業連合会

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