1

地球温暖化のしくみ

イギリスでの産業革命以降、急速に増えてきた化石燃料の利用にともない、CO2の排出量が大幅に増えてきました。CO2やメタンなどの温室効果ガスは、太陽からの光エネルギーをほぼ完全に通過させる一方で、地表から放出される熱(赤外線など)が宇宙へ逃げるのを妨げる効果があります。大気中の温室効果ガスの濃度が増加し続けると、地球の平均気温が上昇し、地球にさまざまな影響を与えることが予想されています。

世界のCO2排出量の推移

世界のCO2排出量の推移

(注) 四捨五入の関係で合計値が合わない場合がある
ロシアについては1990年以降の排出量を記載。1990年以前については、その他の国として集計

出典:(一財)日本エネルギー経済研究所「エネルギー・経済統計要覧2022」より作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

CO2増加による気温上昇の実績と予測

世界のCO2排出量の推移

出典:(※1・※2)気象庁ホームページ、
(※3)環境省「気候変動に関する政府間パネル(IPCC) 第6次評価報告書(2021)」、
(※4)環境省・文部科学省・農林水産省・国土交通省・気象庁 「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018~日本の気候変動とその影響~」等より作成

関連情報(詳細):エネ百科「原子力・エネルギー図面集」

2

脱炭素社会に向けた「国際会議」

2015年12月にフランスで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)では、温室効果ガスの排出量の割合が大きいアメリカや中国、インドなどを含めた主要な経済国が参加し、各国が2020年以降の自発的な削減目標を定めることを約束する「パリ協定」が採択されました。
世界全体の目標として、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて2℃未満に抑える目標が掲げられました。そして、気候変動に脆弱な国々への配慮から、1.5℃以内に抑える必要があることも言及されています。
また、長期的な目標として、今世紀の後半に、世界全体の温室効果ガスの排出量を、生態系が吸収できる範囲に収める目標が掲げられました。これは、人間が活動する際に排出する温室効果ガスの量を実質的にゼロにするという目標です。
このような長期的な目標に向け、各国では5年ごとに温室効果ガスの排出削減の目標を見直すことになりました。さらに、各国の目標の遵守を促すため、各国の削減目標に向けた取り組みや他国への支援などの世界全体の状況を把握するしくみが設けられました。
2022年11月6日から20日にかけて、エジプトでCOP27が開催されました。気候変動の悪影響を受けやすい途上国を主な対象に、悪影響にともなう損失と損害支援のための基金を設置することが決定されました。また、同意された実施計画には、2100年の世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑える努力を追求することや、2030年までに世界の温室効果ガス排出量を2019年比で43%削減することなど、COP26での合意内容が改めて明記されました。

3

カーボンニュートラルの実現に向けて

2021年4月現在、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを125カ国・1地域が表明しています。これらの国のCO2排出量は世界全体の約4割(エネルギー起源CO2のみ/2017年実績)にのぼります。また、2060年までのカーボンニュートラル実現を表明した中国も含めると、世界全体の約3分の2のCO2を排出している国がカーボンニュートラルを表明していることになります。各国の表明内容はさまざまですが、カーボンニュートラルを実現するためには複数のシナリオを掲げて取り組んでいくこととしています。

関連情報(詳細):エネ百科「ニュースでよく聞くあのはなし/カーボンニュートラルって?」

日本・EU・英国・米国・中国のカーボンニュートラル表明状況

日本・EU・英国・米国・中国のカーボンニュートラル表明状況

出典:各国資料から経済産業省作成

4

温室効果ガス排出の削減についての取り組み

2019年度の日本の温室効果ガスの総排出量は、12億1,200万トンで2013年度の14億800万トンと比べると、14%減少しました。前年度からの減少要因は、再生可能エネルギーの導入拡大や原子力発電所の再稼働、またエネルギー消費の減少(省エネ、暖房など)によってエネルギー起源(燃料の燃焼や電気や熱の使用にともない排出される)のCO2排出量が減少したことなどが挙げられます。
2021年6月、カーボンニュートラルへの挑戦を「経済と環境の好循環」につなげるための産業政策として、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。特に温室効果ガス排出の8割以上を占めるエネルギー分野の取り組みを進める必要があることから、電力部門の脱炭素化を大前提としています。現在の技術水準を前提とすれば、すべての電力需要を100%単一種類の電源でまかなうことは一般的に困難であることから、あらゆる選択肢を追求するとし、次のような方向性が示されています。

【再生可能エネルギー】

  • ・コストを低減し、地域と共生可能な適地を確保し、最大限導入する。
  • ・蓄電池なども活用し変動する出力の調整能力を拡大する。
  • ・洋上風力産業と蓄電池産業、次世代型太陽光産業、地熱産業を育成していく。

【火力発電】

  • ・CO2回収を前提とした利用を選択肢として最大限追求する。技術を確立し、あわせてコストを低減していく。
  • ・水素発電は、選択肢として最大限追求していく。供給量と需要量をともに拡大し、インフラを整備し、コストを低減する。水素産業の創出と同時に、カーボンリサイクル産業や燃料アンモニア産業を創出していく。

【原子力発電】

  • ・可能な限り依存度を低減しつつも、規制基準の適合後は再稼働を進めるとともに、実効性のある原子力規制や原子力防災体制の構築を着実に推進する。
  • ・安全性などに優れた炉の追求など将来に向けた研究開発・人材育成などを推進する。

日本の温室効果ガス削減の中期目標と長期目標の経緯

日本の温室効果ガス削減の中期目標と長期目標の経緯

出典:「2019年度の温室効果ガス排出量(確報値)」及び「地球温暖化対策計画」から作成

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日本のエネルギー選択の歴史と原子力

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日本のエネルギー政策〜2030年、2050年に向けた方針〜

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